Glenn Branca

70年代末の、NYアヴァンロックシーン(一応、ノー・ウェイヴとか言うらしい)を捉えた名作として名高い『No New York』。そこには四組のグループが参加しているけれど、実はGlenn Brancaも加わる予定だったという。その場合どれかのグループがオミットされていたのか、それともそれぞれの収録時間を縮めていたのかわからないけれど、もしBrancaが加わっていたとしたら、『No New York』はさらに凄いものになっていたはず。

昨日の!!!は、手本になった方を先に知っている場合からのインプレになったけれど、Brancaの場合は彼を手本にしたバンドを先に聴いていて、後追いで聴く羽目になった。そのBrancaを手本にしたバンドとはSonic Youthの事。SYのThurston MooreとLee RanaldoがBrancaのバンドに参加していた事は有名な話で、DVDの『Silver Rockets Kool Things』ではその事について語るシーンもある。ただし、この手の音はすぐにCDで復刻されたりするものではないし、日本盤なんて出ることがあろうはずも無い。だからBrancaについては知っていても、音を聴いたのはタワレコをウロウロしている時に「あれ? これってもしかして?」と思って手に取った『The Ascension』だった。そしてそれを聴いて「SYってかなりBrancaの影響が・・・」と気付く。あのSYの不条理なリフをBrancaの音に聴く事が出来てしまったのだけど、すでにSYが体に染み付いているので、今更嫌いになろうはずも無く現在に至っている。と、そういう経験をオレ自身がしているので、なにかしらからの大きな影が見えるものでも、否定をするということは出来ない。なので!!!のバックグラウンドにJames ChanceやTalking Heads的なものが見えたぐらいで、「あれはダメだと思う」なんて言えば、自己否定になってしまう。普段から否定されっぱなしなオレとしては、自己否定なんて真似をしている余裕は無い。まあそういう事で、!!!もガンガンいけばいい。そのうち嫌でも違うものになる。



前置きと脱線が長くなったけれど、今年になってBrancaの『Indeterminate Activity of Resultant Masses』という長ったらしいタイトルのアルバムが再発になった。ここには三曲収録されていて、注目は一曲目の「Indeterminate Activity of Resultant Masses」。アルバムのタイトルにもなっているこの曲は、30分を超える長さ。そして恐らく10本のギターで奏でられる事を念頭に置いた作品。実際にこの録音に10人のギタリストが参加しているかどうかは相変わらずライナーをチェックしていないのでわからないけれど、聴けば複数のギターが音を出している事はすぐにわかる。さらに、ベースが参加しているのかしていないのかわからないけれど、あまりそういう音が聴こえない為、かなり上っ面で音が鳴っているし、時々ドラムらしい音が鳴っているけれど、これもイマイチ。多分、録音の状態が悪いのだと思う。初めてBrancaを聴こうと思っている人にはとても薦められない録音。続く二曲目の「So That Each Person is in Charge of Himself」は、フィールド・レコーディングなのか、どっかの路上で誰かが延々と喋っているものが18分にわたって入っている。三曲目の「Harmonic Series Chords」は擦弦楽器による室内楽といった風情で、Brancaに期待する類の音では無い。という事で、Brancaファン以外にはあまり訴えかけるものが無いアルバムだと思う。オレは、、、まあ、嫌いじゃないけど大して好きでもないといったところ。









Glenn Branca 『Indeterminate Activity of Resultant Masses』