Combo Piano

Combo Piano(渡邊琢磨のソロユニット)の音は多分デビュー時ぐらいから耳にしていた。なんで興味を持ったのかは覚えていないけれど、試しに聴いてその斜めった感じが気に入って、新作が出ればチェックしていたし、Kip Hanrahanと組んだりするのを面白く思っていた。ところが何故か菊池某と音を作ったりし始めて、嫌な予感がしたのでそれ以降興味の対象から外してしまった。ところが新作『Growing Up Absurd』はBrandon RossやJohn McEntireが参加していて、菊池某は絡んでいないという事で久々に手にしてみた。

参加ミュージシャンへ興味を持ちながらも、細かいクレジットを見るのもめんどくさかったのでとにかく音を聴いてみる。そしてすぐに思った、Sketch Showに似ている。今回、ポップな歌ものが印象的なのだけど、そのメロディー、ヴォーカル、音の質感が、オレにはSketch Showにしか聴こえない。購入前の事前情報で今作はロックな音だと書いてあったけれど、まあ確かにロックなのかもしれないけれど、ロック特有のカタルシスは無い。取って付けたようなギターの音を聴きながら、ここでのロックは、なんとなくヒロ・ヤマガタラッセンの絵のような印象も受ける。絵筆じゃなくて、スプレーや定規を用意して描き始めた絵に似ている。オレはそういう絵が嫌いだけど、そこに蠢くえげつなさというのはある意味人間らしいと思えたりもして、否定はしない。それと同質の感触が『Growing Up Absurd』にはある。ここまでキッチリ作られたポスト・ロックに肉感的なものを求めるのは間違っている。ある意味ポスト・ロックの完成形とも思えるし、こういうものが出てくるところにロックの面白さがある。

という事で、えげつないけど面白い作品。それに、普段小洒落た音楽を好んで聴きそうな人に聴かせるロックとして十分機能する。









Combo Piano 『Growing Up Absurd』




なんか嫌味っぽい書き方になっているけれど、これだけうまく作られると嫌味もいいたくなるのがストレートなロックからロックファンになったモノの心情(と勝手に決め付けてみる)。このアルバムには何かいやらしさを感じると共に、決定的な個性が欠けているように思う。ホントはそれをだすのは簡単な事だったはず。その簡単な事というのは、ヘタだろうがなんだろうが、渡邊琢磨が歌えばよかった。誰かを上手く使うのじゃなくて、ただ歌えばよかったと思う。それだけでこのアルバムは個性溢れるものになったはず。

何でここまで言うかと言うと、実は結構期待が大きかった。Combo Pianoがあえてロックなアルバムを作る。しかもBrandon RossとJohn McEntireが参加。これはかなりフリークス感溢れるものが出来るんじゃないかと、そういう期待があったのでした。

という事で、決定的な個性というものはどこかから持ってこようとしても出来ない、という事がよくわかる作品。