ZU / 竹村ノブカズ

一昨年このブログにも書いたけれど、ZUのライブでの印象はあまり良くない。Mike Patton率いるFantomasの前座としての演奏とAltered Statesとの共演を二日連続で見たけれど、ASとの共演時はともかく、単独での演奏は一本調子過ぎで面白くなかった。だからその後CDショップで新作などが見当たっても、とりあえず手に取るだけで購入には至らず。

竹村ノブカズはインタビューなどを読むと決して好感の持てるタイプではないのだけど、彼の音楽自体の魅力は否定しがたく、なんやかんやと結構新作を追っていた。だけど数年前に一旦音楽製作から身を引くという状態になり、それ以降の動向については知らなかった。

この両者の連名でアルバムが出るという事はオレとしては変な感じがする。だけどZUのハードコア的な感触の音に、竹村がどれぐらいのデコレーションが出来るのか?という興味がわいて、手に取ることになった。



ZUというバンドはバス・サックス / ベース / ドラムという編成なので、出てくる音に圧力はあっても変化は足りない。ベースはライブで見たときも色々こねくり回して音を作るタイプだったけれど、バス・サックスは流暢な音が出るわけでもないし、ドラムもおもちゃ的なものを使っていた印象は無い。だから短い曲をゴリゴリやる分にはいいのだけど、少しでも長い演奏になると個人的には飽きていたし、演奏時間も15分ぐらいで十分だと思った。でもそこに別の音が加わる事によって何かが出てくるという事はASとの共演で気付いて、でもそれがMats Gustafssonとの共演のCDの場合、それを手に取るには決め手にかけている。それが竹村という、エレクトリックな音の使い手ならば、管楽器が一本加わる事以上の成果が想像が出来て、そしてそれは予想通りだった。ZUの持つ無骨な感じはそのままに、それをうまくトラックメイキングしたという感じが強い。実際に演奏の切り張りがあるのかどうかはわからないけれど、短い曲じゃなくても飽きないし、全体が一定のトーンで貫かれているので、日本盤のボーナストラックはライブ音源だけど違和感が無い。そして、恐らく竹村が扱っているであろうエレクトリックなベース音が、Krushのアルバムなんかでは気に入らない音だったのに、ここではそういう音に思う事も無く、この支配感あふれる音も、使う人のセンス次第で存在価値が変わることに気付いた。









ZU / 竹村ノブカズ 『Identification with the Enemy: A Key to the Underworld




でも、いつの間に竹村は音楽側に戻ってきたのだろうか? この男は音楽的知性が前面に出てきてしまう事があって、それが少し嫌味に思えて、距離感を持ちながらその音に接していた。それでも一時音楽から身を引く状態になる前の音の完成度は文句の付け所が無く、『Sign』のタイトル曲は(若野桂のPVの素晴らしさも影響していると思うけど)、その牧歌的なメロディーと考え抜かれたリズムの編み込みやオカズがあまりにも魅力的で、テクノなどを含むエレクトリックな打ち込み主体の音楽とかクラブ音楽の存在価値が、オレの中で小さくなっていくきっかけになった。その竹村ノブカズが再始動したという事実は喜ばしい。インタビューさえ読まなければ嫌悪感は抱かないので、今後はこの男の繰り出す音に積極的に目を付ける。恐らくそれで、かなりのエレクトリックなミュージシャンの音は不必要になるし。