Anat Fort

ECMという、ジャズ好きには有名なレーベルがある。このレーベル、ヨーロッパ的な美意識で貫かれていて、本音で言うと若干苦手なレーベルなのだけど、最近はオレの耳も抵抗感をなくしてきていて、割と手にする事が多い。で、なんとなくAnat Fortという人の新譜を購入。名前は全然知らなかったけれど、ドラムがPaul Motianなので、ひどい作品という事は無いという判断だった。

その購入したアルバム『A Long Story』を聴いてみる。適当に流していたら気づかない間に終わってしまい、「さすがECMだな」と思う。でもそれじゃあイケナイと思い、iPodに入れて「何が聴きたいと思い浮かばない時に聴く用」として入れておいて、で、やっとちゃんと聴いてみた。

リーダーのAnat Fort、まずピアニストでイスラエル出身というデータを入手。それでこの作品には、そのイスラエル的なメロディーがあると言う事なのだけど、多分耳につく覚えやすいメロディーがそういうものという事なのだろうけれど、個人的にはErik Satie家具の音楽的なメロディーだと思った。わかりやすいし、ほっとけば何の気にも留まらない、そういう類のメロディーだと思う。これは使い勝手はいい音楽だけど、ちょっとアクが足りない。そしてベースはやたらと声を出す人で、そういものは嫌いじゃないけれど、このベースの声はちょっと度が過ぎる。特にイントロがベース・ソロの曲は、声と言うより息遣いがうるさい。これをカナルで聴くと不快。

ということで、残念ながら繰り返し聴く気にならないアルバムになった。このベース、音自体はいいのでもったいない。









Anat Fort 『A Long Story』




一応、Anat Fortの個性を掴もうと思ったのだけど、特にピアニストとしての強烈な個性というものは見当たらない。如何にもECM的な、知的で押さえの効いた音という事は言えるけれど、それ以上はわからなかった。多分、作曲家としての個性が重要視されるタイプなのかもしれない。個人的にはあまり好みの曲とはいいにくいけれど、この人の書いたメロディーからは、多少の個性は感じられる。