恐山

Jim O'Rourkeのユニット、恐山のアルバム『みみどこですか』は、昨年8/11のピットインでのライブをO'Rourkeがミックス・ダウンして作ったライブ・アルバム。それはオレが見たライブなわけで、何度か言っている(自慢している)けれど、自分の見たライブが作品として世に出回るというのは、音楽好きとしては嬉しい。

改めて聴いても圧倒される。O'Rourkeがここまでギターをアグレッシヴに弾きまくった作品というものは、過去にも無かったなんじゃないだろうか?、と思えるぐらい、全編にわたってO'Rourkeのギターが暴れている。ドラムのChris Corsanoのこの手数の多さも相当なもの。実際のライブの時もタフだと思ったけれど、硬質な音をこれだけ叩き続けるのは、かなりの体力が必要だと思う。Darin Grayは、ギターとドラムの尋常じゃない音の中に、Wベースで切れ込む。普通に考えればかなり不利な状況。これがエレクトリック・ベースなら、重低音一発で存在感を示す事も容易ではないはずなのに、Wベースはそれに比べれば非力。それでも音に埋もれる事を良しとしないかのように、ノイジーなギターと、強い音をたたき出し続けるドラムの間でWベースの音が主張する。

打ち合わせの無い完全即興での演奏だったという事なのだけど、お互いの音を手探りで辿っていくような演奏ではなく、行きたい場所を言わずとも分かり合っているという類の演奏で、ぶつかり合うというよりも渾然一体となって音が進む。スタイルとして新しいものではないけれど、演奏そのものにすべてを出し切るという行為を聴く事は、新しいとか古いとか、そういう事とは別の次元で音を捉えることが出来るし、その際たるものがフリー・インプロヴィゼーションというスタイルだとオレは思っていて、演奏への緊張感と責任感と期待と不安が入り混じるこのスタイルだからこそ、到達できる極みがある。それが『みみどこですか』には、克明に刻まれている。









恐山 『みみどこですか』