大友良英

大友良英の新作『幽閉者』は、同名の映画のサントラ。いくつかのこの作品のレビューを見ると、大友良英の集大成という事が言われている。それまでの大友が作ったサントラでは、ノイズを入れるような事が殆ど出来なかったけれど(全ての作品を聴いているわけではないので、間違ってるかもしれない)、『幽閉者』ではノイズが多用されていて、それがこの作品を集大成的に感じさせる要因だと思う。何かしらのユニットでのライブなり作品というのは、そのユニットでやる事、やれる事というものを念頭において取り組むものだと思うけれど、サントラはまず先に画があるわけで、その画に対して音を付けていくという決まり事はあっても、そこに入れる音は手法を限定されるものじゃない。それならば、その音を作るものが誠実であれば、それまでに自分の得たスキルを使い切ってでもその音を表現しようとするだろう。だから自ずとサントラというものは集大成的な要素をはらむものだと思うし、特に『幽閉者』ではノイズを多用できる画が多かった(であろう)という事が、大友ならではのスキルをそれまでの作品よりも生かせる条件が揃ったという事なのだと思う。だから集大成という言い方は当てはまると思うし、それを大友自身が狙ったのかどうかも知らないけれど、それでも、『幽閉者』にGround-Zeroのコアが表現されているとは思えないし、ONJO(かEかQ)が『幽閉者』に含まれていると思える部分はあまり感じない。どちらかといえば、大友良英という個人名を使ったソロや連名作などでの手法の集大成という、限定的な感じがある。









大友良英 『幽閉者』




批評の批評みたいになったけれど、そういうつもりではなく、単純に集大成というのはどういう事なのか?、という事をオレなりに考えてみただけで、作品としての出来は文句なし。特に「M8 - Reminiscence 2」の間を生かしたノイズと大太鼓とギターの音は、筆舌に尽くし難い。

そしてこの作品は重低音と言えるような音が殆どなく、iPod+カナルというオレの多用するスタイルで聴いていると、ピアノやギターのソロ作品を聴いている時と同じように、外部の音を拾ってしまう。その状態は、この作品がサントラという事もあり、少し遠くから聴こえて来る人の声や物音などが、作品の中に組み込まれているものなのか、そうじゃないものなのか、わからなくさせる状態を生み出す。