山中千尋

買ってもいないのに難癖つけるのは反則だろうと思い、山中千尋というピアニストについては何も書いてなかったのだけど、やっとの事で中古を見つけて購入。試聴ではなく、ちゃんと聴いてみてそのインプレを書ける事になった。



手に入れたのは目下のところ最新盤の『Lach Doch Mal』。「基本的に最新作」というオレの趣向にあったもの。で、聴いてみてどうだったかというと、そんなに印象は悪くない。なのでもう一度、今度はiPodに突っ込んでカナルで聴いてみる。そうすると印象が変わった。適当に聴いている時には気付かなかったけれど、ピアノが一本調子で、派手に音を鳴らしているけれど、それだけの印象しか残らない。自作曲の「Night Loop」とか「One Step Up」(フェンダー・ローズ使ってます)は、ダーティーな音を使った印象に残りやすい曲なのに、曲の印象のわりにソロは印象に残らず、ジャズを聴くという部分において大事なところの魅力が足りない。バッキングのリズム隊はドラムのシンバルがうるさく、スピード感があるのはわかるけれど、もう少し抑えた叩き方をした方がピアノの音と喧嘩しないはず。喧嘩する事でいい方に働くのならいいけれど、そうなっていない状態ではただ煩いだけ。ベースは可も無く不可も無く。









山中千尋 『Lach Doch Mal』

山中はピアノの鍵盤を叩くスピードはある。だけど、そこに気を取られているせいか、速く弾いている時は音が軽い(そうじゃなくても軽い)。だからアルバムの1曲目の「Quand Biron Voulut Danser」のような軽いラテンタッチの曲がこの人には向いていると思う。

という事で、個人的には特に聴く必要のあるものだとは思わないけれど、だからと言って、山中というピアニストがダメという事は無い。この人のちゃんとした経歴は知らないけれど、もっといろんなタイプの演奏者とセッションしたりする事によって、色々変化が起きる可能性はある。編成もピアノ・トリオというものだけじゃなくて、管楽器を入れる事によってもっと色んな作用が起きるはず。ピアニストがリーダーのピアノ・トリオにおいて、ピアノが目立つなんて至極当然なのだから。

今の状態なら抜きん出たものを作らなくても、日本のジャズ界においては相当売れているはずなので、その殻を破るのは難しいかもしれない。まあ、ちょっと可愛い子が、それなりにジャズを弾いているというだけでそれを聴きたいという心理もわからないでもないので、そういうポジションに本人が満足しているのなら今のままで特に問題は無い。



得意のゴチャゴチャウダウダになったけれど、どんなものだって最終的には好みの問題。オレはフリーに近いもの(或いはそのもの)の方が好きなので、そういう音に比べれば山中はどうしてもこういう評価になる。オレも食べ物なら辛過ぎるものは嫌いだし、音だってそういう嗜好を否定するのもおかしい事はわかるし。でも、色々試してみた方が面白いから、これからもたまには、明らかに嗜好にあわないものも試してみたい。納豆とかレバーも、年に一度は試しているし。