DJ Shadow

昨年の国内盤発売時に買って「ん?」と思いながら繰り返し聴いて、一応ここにインプレ書こう思っていたけれど、そのうち忘れてしまっていたDJ Shadowの『The Outsider』。ここに書いているインプレの8割方は、1回聴いた時点で書いているもので、そうやってさっさと音を頭に残して別の音を聴くというのがオレのやり方。そういう時、あまり知らないミュージシャンのものはその個性を掴むように聴く努力をして、よく聴いているミュージシャンの作品は、それまでとの違いがあるかどうかを確認しようとする。で、Shadow。この人は1st『Endtroducing...』の頃から聴いているので、個性は掴んでいるつもりだった。だけど『The Outsider』を聴いて、「あれ?、この人ってどんなスタイルだっけ?」と思い出せず、1stのDeluxe Editionをもう一回引っ張り出して聴こうと思ったけれど、めんどくさくて止めてしまった。そんな風だったので、適当な事書くのもなんなので、とりあえずそのうちに書くつもりだったけれど、気が付くと年が変わっている。ヒップホップ三連発というのも面白いだろうと思って、改めて『Endtroducing...』を聴いて、『The Outsider』を聴いてみた。



一応、昨年何度か『The Outsider』を聴いた時の悪は印象は無かった。このアルバムを出すにあたって、変化があったことをShadow自身も認める発言をしていて、それで何が変わったかがすぐに思い浮かべなかったのだけど、『Endtroducing...』を聴いてすぐにわかった。それはDJ Krushの『Stepping Stones: The Self Remixed Best』と同じで、音がデジタルな感触になっているという事。普通はインストから歌とラップ入りに変わった事を指摘するべきなのだろうけれど、そこよりも個人的にはこのデジタルな感触の方が気になる。要するに気に入らない。全部がダメという事じゃなくて、例えば歌ものは案外良かったりするのだけど、ラップ入りのノーマルなヒップホップスタイルの曲のトラックの音が気に入らない。硬すぎる。ベース音もこれでは音に色気が出ない。2曲目の70年代ソウルな「This Time」なんて結構いいのに。なんかチキチキ・ビートを思い出す。そういえばこの人、デビュー時はアブストラクト・ヒップホップ(トリップ・ホップ)とか言われてた。確かに『Endtroducing...』にはそういう感触もあるけれど、実際は結構メロウな音の印象が強く、70年代のソウルとか、多分フュージョンとか好きな人でも聴けそうな感じ。それをサンプリングで作っているのでアナログ特有のざらつきがあって、そこが良かった。それが『The Outsider』にはあまり無い。アルバムを通して聴いていると飽きるというか、聴き流す状態になってしまう。身の回りの出来事によって方向性を変えたと本人も言っているけれど、これは本国アメリカでのセル・アウトを狙ったものだと言われても仕方が無い方向性。別にそういう動機自体は否定しないけれど、作品が面白くなければ、そういう事は言われるものだと思う。まあ、この『The Outsider』からShadowを聴く人と、それ以前から聴いている人ではアルバムに対する印象は変わるだろうけれど、これならオレはNasとかSnoopを聴く。



1stを改めて聴いていて思ったのは、ShadowとKrushはやっぱり似ている。ぶっちゃけ、「Midnight in a Perfect World」とか、Krushの「Kemuri」かと思った(このドラム・・・)。それで気付いたのは、結局オレは、Shadowの音もKrushの音とひっくるめて聴いていたという事。だから、Krushのイメージはあっても、同じようなものとして認識していたShadowのイメージは残っていなかった。その二人が去年出したものがデジタル色が強いという事は、ちょっと残念。









DJ ShadowThe Outsider




ウダウダを続けると、Krushは結構アルバムによって方向性が違う。1stの『DJ Krush』はジャジーな印象が強いし、2ndの『Strictly Turntablized』(リンク先はアナログ盤だと思う amazonのマーケットプレイスとか見ると笑える)はターンテーブリズムの先駆け的な音。次の『迷走』(オレはこれが一番好き)はそれまでの自分の音に本場のヒップホップの血を取り入れて、『未来』は日本人ラッパーをフィーチャーする事で間口を大きく広げる。そして傑作『覚醒』は、ヒップホップを音響的に構築したといえる音で、ここで今までと大きく音の感触が変わるけれど、このアルバムのもつ響きはBな連中じゃない方が受け入れやすいかもしれない。次の『』はとっ散らかった感の強いもので、曲によっての出来不出来が激しいけれど、Tha Blue HerbのBossをフィーチャーした名曲「Candle Chant」がある以上、これを無視する事は出来ない。しかし続く『深層』は、個人的にはKrushのアルバムで一番聴かなかったもの。ここでデジタル感はかなり強くなり、オレは危惧を抱き始めていた。ところが『』はわりと良くてホッとしていたのに『Stepping Stones: The Self Remixed Best』が出てしまい、「・・・」となっている。

要するに結構Krushには振り回されているのだけど、やっぱ結局期待していて、『Stepping Stones: The Self Remixed Best』はベスト盤だし、まあいいやと思う事にしている。