Punkt

ディスク・ユニオン新宿ジャズ館の、北欧ジャズコーナーのポップに煽られて購入したPunktの『Crime Scenes』。Sidsel EndresenやNils Petter Molvaerに加えて、David Sylvianが参加したと書いてある。Punktというユニットはまるで知らない上に、レーベルもPunkt Recordingsという聞いた事の無い名前。これがJazzlandとかRune Grammofonなら躊躇無い。けれどユニット名とレーベル名が同じという事は、もしかしたらコンピなのかもしれないと思ったけれど、北欧ジャズのオールスターコンピだとしてもそれにSylvianを加えるセンスだけでも買いだと思い、わけもわからず購入。結局これは大当たりだった。



Punktというのは、Jan BangとErik Honoreというサンプラーとかシンセとかプログラミングとか、そういうものを使うミュージシャンによるユニット名。その2人が主催してノルウェーでこの名前の音楽フェスティバルをやっているらしく、そこからつけた名前なのだろう。そのフェスに参加していたミュージシャンを起用しながら作ったと思われる『Crime Scenes』は、さらにギターのEivind Aarset、歌とトランペットのArve Henriksen、パーカッションのAudun Kleiveと、そうそうたる面子を曲毎にフィーチャーしている。



透明感溢れるトラックとSidselの歌声が融合する「Map」、短いインタールード「Challenge」の後の「Angels」では重心を落とし、Sylvianの深い声が語るように響く。更にNilsのトランペットによるインタールード「Picket Fences」、エディットされたJanの歌声が印象的な「Comfort」、続く「Her Ghost」では再びSidselが登場し、効果音のようなヴォーカルを披露。Arveのらしいトランペットが漂う「Body Language」は、パーカッションの活躍により、ここまでで一番リズムが印象的。またしても短いインタールードの「Patience」の後の「Speechless」は、どこかの民俗音楽のような歌声が印象的だけど、色んな要素が少しずつ複雑に絡み合う。リズムが消える瞬間にAarsetのギターが響く「Bird's Eye」、Sidesの声を活かしたいという思いだけで作ったような「Residue」、パーカッシヴなリズムに、如何にもNilsなトランペットと、Arveと思われるトランペットの挿入も効果的な「Reconstruction」、終曲「Loss」は、ベース音を殺したクリック・ノイズなトラックにイントロでArveのトランペットをわずかにフィーチャーし、終盤で今度はAaveの歌を入れている。



どうしようもないぐらいに寒い季節が似合う『Crime Scenes』は、ジャズとエレクトロニカの融合という、ここ数年のテーマの一つの理想形だと思う。







Punkt 『Crime Scenes』