芳垣安洋KC7

昨夜のピットインは、VAに続いて冬の芳垣安洋2daysの2日目。KC7というユニットでのライブ。頭に思い浮かぶのは6月のKC5。一応ジャズ的な演奏で、ジャズに拘らない演奏を行うライブだったけれど、今回はベースを吉野弘志から鈴木正人に変更し、さらに内橋和久と、Poralisのボーカルのオオヤユウスケが加わった編成。元々はIntoxicateの昨年のクリスマス・イブのイベントで組んだのがこの面子らしい。結論から言うと、KC5とは似て異なるものだった。



ボーカルが加わるという事で元々若干の不安はあったけれど、まあそういうのもありかと思って見に行ったライブ。そのオオヤは1stで2曲、2ndで中盤辺りから再度登場して歌う。Poralisというバンドの名前は聞いた事あったけれど、どんなバンドなのかも思い出せなかったし、めんどくさいので調べる事もしていなかった。昨夜のライブを見て大体どういうバンドかわかった。で、オオヤの事は追記で。

演奏は、高良久美子と内橋を除く他のメンバーの曲を1曲ずつ演奏(但し、青木タイセイのみ2曲演奏された)。サックスとクラリネットの塩谷博之の「Moon」は、芳垣のいうようにリリカルな曲で、それにあった音色で演奏される。かなり癒される音で、CDで手元に欲しい曲だった。鈴木の楽曲は、最近発売された1stリーダーアルバムの『Unfixed Music』から「El Hombre Dorado」を演奏。元々はグループ・コンポジションを重視した楽曲だけど、CDではこの曲には参加していない内橋が加わる事によって音の尖り具合が変わる。タイセイ作曲の2曲のうち、2ndで演奏された「(タイトル失念・・・)」は、芳垣曰く「自分の中で大ヒット」と言われた曲。この演奏の後に登場したオオヤもかなり気に入った様子で、芳垣とオオヤの2人にとっては大ヒットという事で落ち着く。まあ、そう言わせるぐらいの美曲で、なんとなく冬のイメージの音だったけれど、それをかもし出す演奏は、昨夜のベストな演奏だったと思う。オオヤの作曲した楽曲は、映画のために作った曲という事で、これもかなり情景的な音。その映画のサントラでの唯一の歌入りという事だったけれど、前半部分はインストで、予想外に良い曲だった。ライブでは他に、Loui Armstrongの「What a Wonderful World」やElvis Preslyの「Can't Help Falling in Love」(但しUB40バージョン)、さらに今は拠点をウイーンにおいている内橋への応援歌ということで「エーデルワイス」、そしてクリスマス・シーズンに相応しく賛美歌(1stの最後とアンコールでも歌われた)等が演奏された。



演奏される楽曲を提供しなかった高良は、ガチガチな音を発する瞬間はあまり無かったように思うけれど、随所でマリンバの響きを生かしたバッキングを行っていて、どの演奏においても、必ずその音を気付かせる瞬間を持っていた。

塩谷は6月に聴いた時と同じように、あまり前面に出てくることは無く、出てきてもエゴを押し出すような事はしない。無理の無いラインをスーッ吹いて、サッと消えてみせる様が渋くてカッコいい。見た目は何処にでもいる普通のおじさんなんだけど・・・。

タイセイはライブの冒頭で芳垣に「昨夜は八面六臂の活躍」と紹介されていたけれど、ベース担当だったVAの分とでもいうようにトロンボーンでソロを取って、「ああ、この人もこういうソロの取り方するんだ」と思ったけれど、オレは実はタイセイのフルートが好きで、昨夜はそのフルートでも活躍。絵になる。出来ればフルートだけでアルバムを1枚作って欲しい。

そして内橋。昨夜一番の個人的な見所は、(オレは内橋のそういう演奏をあまり見ていないので)作曲された楽曲に内橋がどう絡むのかという事だった。そしてそれは、かなり自由が約束されている演奏と、譜面に忠実な演奏と両方を披露。普通に弾いているところはなんとなく可笑しかったけれど、選ぶ音色は内橋らしいもので、結局個性は出てくる。自由にやっていると思われる演奏は、言う事なし。で、恐らく昨夜最もうけたのは、1st最後の賛美歌でのダクソフォン。子供の声のような音でオオヤに絡む。ほぼ2人で演奏している状態の時に、オオヤを含む他の演奏者も皆内橋の方を見ていて、ダクソフォンのキテレツさにニヤついていた。

そして昨夜の司会進行役の芳垣は、予想通りに特に自らが大きく前に出ることは無く、全体の仕切りと堅実なバッキングに努める場面が多い。それでもところどころ流石な一面を発揮。そういう時はすぐに耳がそこを向く。




で、オオヤ。芳垣がRovoでPoralisというバンドと同じイベントに出ることがあるらしく、そのときのステージでオオヤの歌う姿を気に入ったらしい。そのオオヤの歌というのは、朗らかであまり癖の無い歌い方だったけれど、多少感じる個性が誰かに似ている。その誰かはすぐに気付いて、それは佐藤伸治だった。そしてMCの内容から恐らくポラリスというバンドはレゲエ系だという事に気付いて、さっきネットで調べてわかったのだけど、ポラリス柏原譲と組んだバンドだった。それってなんかオレにはちょっと、残念な気持ちになる事実でもある。



あんまり連続でライブを見に行くと、集中力に問題が出てくるのでなるべく避けようと思っていたけれど、結局三連荘。今年はこれで最後かと思っているけれど、もう1本見たいものもあって現在悩み中。