David Murray

MZN3の『MZN3』を聴いて、フリーなジャズのトリオ編成ということでDavid Murrayの『3D Family』を思い出し、それを久しぶりに引っ張り出して聴いていた。その頃のMurrayのサックスは、ヨーロッパのフリー・インプロ的なフレーズを、彼ら破滅的な感覚とは違って黒く重たい音で奏でていて、その部分において、オレはMurrayというサックス奏者の方が好みだった。さらに、リアルタイムで出ていた『Deep River』を聴き、James Blood Ulmer率いるMusic Revelation Ensembleや、Jack DeJohnetteのSpecial Edition、そしてOliver LakeやHamiett Bluiett、Julius Hemphillといったそうそうたる面子でのWorld Saxphone Quartet等々を聴いて、アメリカのフリーなジャズにおいて、Murrayというサックス奏者が最も重要な位置にいるという事を認識していた。ところがいつ頃からか、Murrayに対する興味が薄れ、Murrayもあまり話題に上る事の多くない存在になり、彼の新作を聴くという事はなくなっていた(WSQの『Selim Sevad - Tribute to Miles Davis』は買ったのだけど、イマイチだった)。『3D Family』を聴いて、久しぶりに新作か近作を聴いてみようと思い、昨年リリースされていた『Waltz Again』をみつけ、ジャケットを見て「これはダメかもしれない・・・」と思ったけど、とりあえず購入。アルバムのクレジットはDavid Murray 4Tet & Stringsになっていて、これを見ただけでも「ちょっとなあ」だけど、せっかく買ったので聴いてみる。

もしかするとこのアルバムはMurrayの集大成的なものかもしれない。フリージャズを中心にしながら、それまでMurrayが培ってきたであろう、色々な要素が音楽に取り入れられている。思ったよりもストリングスとの絡みも悪くない。だけど、なにかツマラナイ。何がツマラナイのかよくわからないけれど、どうにも学究肌的な音に聴こえて、「Wyntonか?」と、言いたくなる。









David Murray 4Tet & Strings 『Waltz Again』




Murrayを初めて聴いたのはジャズを聴きはじめてすぐの頃で、DolphyやColtraneを引き継ぐインプロヴァイザー的な存在だったと思う。だけど当時は田舎に住んでいたオレが手に入れられるのは、先のWSQの『Plays the Music of Duke Ellingtion』と『Dances and Ballads』というアルバムぐらいだったのだけど、それがなかなか面白くて、その後CD化された『3D Family』を聴いて、オレはMurrayのファンと口にするようになった(この頃は、Steve ColemanよりもMurrayの方が好きだった)。個人的なベストはJohn Hicksとの『Sketches of Tokyo』。このピアノとのデュオ集は、両者の黒さと鋭さが印象的な作品。

『Waltz Again』は悪いアルバムでは無い。だけど、やはり最初に聴いていた頃の印象が強いせいで、へんにコンセプチュアルな方向でトータルな出来を考えてしまったこのアルバムでは、オレの好きなMurrayの強い音は聴こえにくい。ずっと彼の音を聴いているような人ならば、ここまでの変貌を知っているのかもしれないけれど、オレはやはりあの頃の印象を求める。まだ老け込む歳ではないはずなので、何かに誘発されてもう一度あの凶暴なサックスの音を奏でてくれる事を期待している。

で、『Waltz Again』を購入後に床屋さんからの商品入荷のメールにより、『Solo Live』という80年に録音されたもののCDが入荷した事を知る。他に欲しいものもあったので早速オーダー。CDが届き、『Solo Live』を聴いてみたのだけど、これは凄く良い。これを聴いていると、Albert Aylerを髣髴させる場面が多々あり、『Flowers for Albert』というデビュー・アルバムを作っただけの事はある、と思って、『Flowers for Albert』を引っ張り出す・・・。