MZN3 / 八木美知依

六本木もえらく久々。麻布はたまにいくことが無いわけじゃないけれど、六本木という駅を使った事の記憶が21世紀になってからは無い。ガキの頃はエリアやマハラジャ、ハードロック・カフェを冷やかしで覗きに行ったりすることもあったし、ホントはディスコが嫌いなオレは、コロッケというレゲエの生バンドが常に出演しているライブハウスが好きで、そこに遊びに行くことが好きだったのに、気が付くと六本木に足が向かなくなっている。恐らく、六本木ヒルズなるものが出来たあたりから殆ど六本木に行ってない。つーか、六本木ヒルズを間近で見た記憶は羽田からリムジンバスで帰るときに見た記憶しか残っていない。なので割と六本木に近いところに住んでいるにもかかわらず、その辺のおのぼりさん達の方がオレより「東京のイケテル場所」に詳しいんだろう、などと考えながらそのヒルズを横目に、今回はじめて行ったスーパーデラックスのあるビルに到着(ちなみに住所は西麻布)。殺風景な自動ドアに開いてもらって、階段を下り地下の入り口で料金を支払って中へ入る。予想よりも広く、ステージの無い状態である事から、ライブハウスというよりイベントホールなのだろう。座席も通常の椅子だけじゃなく、背もたれの無いシート状のものが多い。そのシートが座りやすくて他のライブハウスよりも洗練されている。ビールもちゃんとサーバーから注いでいるし、種類も多い。クラシックスもビールをサーバーから注いでいてい好感度高いのだけど、あそこの唯一の欠点は椅子の座り心地がイマイチな事。そしてピットインは350mlの缶ビールが¥600なのでちょっと高い・・・。



話を戻すと、昨夜のスーパーデラックスはMZN3+Yというライブで、MZN3八木美知依のセッションだった。1stセットはMZN3だけでの演奏。まずはパワーとスピード感あふれるドラムに意識が向く。CDでもなかなかタイトでいいドラムだと思ったけれど、ライブはさらによく、カッコいい。個人的にはPaal Nilsen-LoveよりもこのKjell Nordesonというドラマーの方が好み。とか思いながら聴いていると、今度はPer Zanussiのベースに耳が向く。速いフレーズも細かいフレーズも軽がるこなすテクニシャンである事はCDでもわかるけれど、生音の感触がメチャクチャよくて凄く気に入った。北欧のミュージシャンである事を思えば、多分根底にクラシックの美意識がありながら、ジャズのもつ攻撃性に引かれて音楽をやっているという感じがする。単純にジャズだけの素養で弾いているタイプのベーシストではないはず。で、残るはサックスのKjetil Mosterなんだけど、リズムの2人が相当際立つせいか、少し影が薄い。もちろん、圧力のある音を放つのだけど、音のバランスとしてテナーやバリトンを使うこのサックス奏者の吹き方は、あまりスタッカートを感じない吹き方を多用する為か、ベースの音にのまれている感じがする。だけど、3者が低い音で押し上げていく様はなかなかの迫力で、これは否定しがたい魅力。

ちょっと短めの1stセットから休憩をはさんでの2ndは、いよいよ八木さんが加わっての演奏。まず、八木さんがソロ状態で箏を弾く。MZN3の演奏には無い音を聴いて、このセッションは成功すると思った。イントロダクションのような八木さんのソロにMZN3が加わり、セッション開始。フリーなセッションなのかと思っていたけれど、そういう事ではなく、曲を持ち寄っての演奏だった。だけどそんな事はどうでもよくて、4者の音の交配は文句なし。1stで足りなかったものを、八木さんの音が補って余りある状態。特にベースとのコントラストが良くて、ドラムもサックスもその2つの楽器を前面に押し出す為に、自らを脇役として甘んじる事に徹しているかのようだった。




常々思っている事なのだけど、八木さんって少しコスプレ趣味あるんじゃないかと。特に昨夜の格好はどう見てもコスプレだよなあ。べつにいいのだけど。で、昨夜の八木さんの演奏は久々に悪魔の八木を見た感じだった。時々セッション等で顔を覗かせる悪魔の八木状態があって、ゴキゴキ・ガリガリといった音を出す事に意識が移行してしまっている瞬間がある。例えばJason Roebkeとのセッションでもそういう音は多少は出てきていたと思うけれど、それはいくらかの音の中から、少しだけそういうものを出してみせるぐらいの使い方という感じなのに対して、悪魔な状態の八木さんは、ゴキゴキな音を出す事にだいぶ意識がもっていかれている感じで、なかなか迫力がある。1度見てもらえばわかると思うので、YouTubeでMichiyo Yagiで検索をかけると今年の7月にノルウェーで行われたPeter Brotzmann&Paal Nilsen-Loveとのセッションでの、八木さんの悪魔なゴキゴキやっている演奏が見られるので、チェックする事をお薦めします。



昨夜は結局50人未満ぐらいの集客だったように思う。その倍いてもおかしくないと思っていたけれど予想が外れた。オレもライブ鑑賞4連荘になるし、スーパーデラックスも行った事が無かったのでちょっとどうしようかと思っていたけれど、実はクラシックスでのモリ / 高橋 / 内橋のライブの休憩の際に、イクエさんが客席の外国人に英語でなにやら話しているのが聴こえて、どうもその会話の内容から恐らくその外国人はMZN3だと思った事と、そのライブの後やピットインでのAltered Statesのライブ後でマーク・ラパポート氏がこのライブのチラシを配っているのを見て、「なんかこれは、どうしてでも見に行かなければいけないのかもしれない」と、勝手な使命感に駆られて見に行ったのだった。