Syd Barrett / Pink Floyd

オレが高校生の頃はアナログとCDの転換時で、その頃のCDの値段は¥3,200〜¥3,500ぐらいが相場だった。当然高校生にはキツイ値段なので、欲しいCDが複数枚あるときは結構悩んで何を買うか決めていた。今では¥1,800どころか¥1,500でも過去の名盤が手に入る状況になっているけれど、その頃東芝EMIが「何とかグリーン・シリーズ」とかいう事で¥2,800で過去の名盤をCD化し、Beach Boysの『Pet Sounds』を手に入れたのだけど、その時よくわからずに購入してしまったのがSyd Barrettの『Opel』だった。多分、「伝説のクレイジー・ダイアモンド」みたいな謳い文句に引っかかったのだと思う。その『Opel』はSydのオリジナル・アルバムではなく未発表曲などを集めた編集盤で、圧倒的な演奏や歌声、或いは魅力的な楽曲などという類のものではなく、なんか妙な浮遊感を持った感じの音で、まだガキなオレは微妙な感じに思いながらも、折角買った1枚だったので結局繰返し聴き続けていた。今年の7月にそのSydが逝去したというニュースを聞いて、「え? まだ生きていたの?」と思ったのが正直な感想。『Opel』はとっくに手放していたので、よくあるパターンでSydのCDを追悼の意味で、というかこういう機会でもないと聴きなおす事も無いだろうと思い、1stソロの『The Madcap Laughs』を買ってきた。今改めて聴いても、特に強い印象を残すようなものでもないけれど、やはりわかりにくい奇妙さはあって、どの楽曲がどうと思うこともなく、淡々と音が流れていく。

そのSydの在籍したPink Floydは苦手なバンドの一つ。プログレと言われるものの全般が好きじゃなくて、それは多分プログレよりも先にジャズを聴いていたからだと思うけれど、演奏を聴かせるという言い方の割には、あまり楽器同士のぶつかりあいが無いところが冗長なだけに感じられる。とはいいながらも何故かKing Crimsonは好きで、一応全アルバムを揃えているし、Soft MachineとHenry CowはCrimsonよりも好きなので、シーンとして聴くのではなく、個々のバンドとして聴けば悪くないと思う。話を戻すと、Pink Floydは20歳ぐらいの時に『The Wall』を聴いてツマラナイと思い、それ以降なかなか聴く気にならなかったけれど、2001年に紙ジャケ化された際にThe KLFが『Chill Out』でジャケットをパロった『Atomic Hert Mother』と、名盤の誉れ高い『Dark Side of the Moon』を購入。とりあえず聴いてみて、結局お蔵入り。思うところあって最近それを久々に引っ張り出してきて、何度か聴いてみた。

『Atomic Hert Mother』は1曲目の「Atomic Hert Mother」がメインのアルバムだと思うけど、これのブラスの鳴りがまるでクラシックのブラスのようで、個人的にはかなり苦手。曲のテーマはわかりやすく、そういう意味では耳に馴染みやすいけれど、効果音が時代を感じさせて少し笑える。全体的に大げさな感じがするにもかかわらず、ロック的なカタルシスとは無縁で、聴いていると眠くなる。確かに『Chill Out』な感じ。

『Dark Side of the Moon』はアルバム1枚で組曲形式。曲のテーマが「Atomic Hert Mother」のバリエーションと思えるような感じでもあるし、なんとなく「Atomic Hert Mother」の拡大解釈というか、ロング・バージョンといった趣。女声コーラスのある部分がなんかでサンプリングされていたなあと思ったけど、なんだったか思い出せず。他の曲に比べてロックしている「Money」が気に入った。









Syd Barrett 『The Madcap Laughs』









Pink Floyd 『Atomic Hert Mother』









Pink Floyd 『Dark Side of the Moon』




ちなみにYesとかEL&Pも苦手。Pink Floydも含めて、これらのバンドは美意識がクラシックにあるような気がするのだけど、Crimsonはそれらのバンドと比べて、ロックしているというか、尖った感じがあるので気に入ったのだと思う。Soft MachineとHenry Cowはカンタベリー派なので、もしかしたらカンタベリー派はいけるのかもしれないと思ったけど、KhanもHatfield & The NorthもCaravanもあまり気に入らず、それ以上は聴いていない。だけど、CanとかAreaとかMagmaは好きで、なんとなく自分でも好きな系統はわかってしまって、我ながら少し痛い趣味かもしれないと思う。

今回聴いたPink Floydの2枚のステレオ・バランスは如何にもあの時代のそれで、それもかなり印象を悪くしている感じがする。『Dark Side of the Moon』はMFSL盤があるので、それはもしかしたらその辺をいじってあるかもしれないので、少し聴いてみたい気持ちはある。



ちなみにPink FloydはSydを聴いたからその流れで聴いたわけじゃなくて、昨年、結成16周年記念のライブ時にSantanaの『Lotus』を全曲カバーした某バンドが、今度は17周年記念でPink Floydのカバーをやるという事を知ったからで、そのSantanaカバー時に妙に盛り上がっていたのを目の当たりにした事と、しかもカバーするのが『Atomic Hert Mother』の「Atomic Hert Mother」と『Dark Side of the Moon』の全曲という事で、よりによってたまたまオレの持っている2枚だったので、今回は予習しておこうと思って聴いてみた。完全再現とは言っているけれど、どう転んでもオリジナルよりはオレの好みの音になることは間違いない。とりあえずそのライブまでもう1回聴いておく。