Ornette Coleman

新作『Sound Grammar』は、今年オーチャードで見たツアーのヨーロッパ公演をCD化したもの。そのオーチャードでのライブの印象が良くなかったので、初めに見つけた時は買わないつもりだったけれど、その頃レコファンは輸入盤が¥200引きだかなんだかでちょっと安かったので、「まあ、いいか」と、とりあえず買って、1度軽く流す程度の聴き方で放っておいていた。それをこの間の八木のライブに行くバスの中でなんとなく聴いてみたら、ライブの時よりも印象が良い。内容が良いというよりも、音がオーチャードで聴いたライブよりも、このCDをMP3にしたものの方が聴き応えがあるという事。それが何故なのかよくわからないけれど、多分オーチャードがジャズに向いていないのと、「あのOrnetteのライブだ」という開場の雰囲気に馴染めなかったオレの偏屈な気持ちが、iPodによって取り払われたのかもしれない。

こうやって改めてOrnetteを聴くと、当たり前と言われそうだけど全然Dolphyの影響が無い人なんだなと思う。例えばこの間のICP Orchestraのアルト(多分Michael Moore)を聴いていてもDolphy的だと思う瞬間はあった。坂田明も勿論そう。ライブじゃなくても、Dolphy以降のアルト奏者には、なんらかのDolphy的なフレーズが聴こえてくる事は別に珍しくない。それなのに、共演までしたOrnetteはまるでDolphyの影響が無い。怒られるかもしれないけれど、それは多分、Ornetteの技術的なものが影響しているような気がする。そして、やっぱりこの人の音は音痴だと思う(死ぬほど叩かれそう)。サックス自体が普通の筐体じゃ無いのだろうけれど、変にずれた感じは楽器の問題だけではなくて、Ornette自身の内なるものだと思う。それとCDを聴いていて思ったのは、アフロ・アメリカンな音が全然感じられないという事。Milesなんかの、あのギトギトに黒い音とは違って、ヘタな白人バンドがファンクをやろうとしてるけれど、なんかずれているような、そんな感じ。あの『Dancing in Your Head』も、改めて聴くとヘタなファンクに聴こえる。









Ornette Coleman 『Sound Grammar』




あまりOrnetteの曲にアフロ・アメリカンを感じないと書いたけれど、『Sound Grammar』を聴いて、アフリカン・ポップス的な開放的なメロディーを感じた。ジャズという場において、この作曲センスを考えれば、それはやはり感覚がフリーなんだろうと思う。そして、だからこの人は天才という事があてはある。

オレはジャズは曲よりも演奏の内容だと思っているけれど、それでもいくらかの曲はその曲自体に引かれるものがあって、そのなかでも「Lonely Woman」は(この曲を初めて耳にして18年ぐらい経つ)、今現在において最も好きな曲。