Faiz Ali Faiz / Kayahan Kalhor

「Nusratを見る事が出来なかったから」という事もあり、一度カッワーリーを生で聴いてみたいと思っていた。そして昨夜、Faiz Ali Faizのコンサートに行ってきた。初来日、しかもアジアでは、母国であるパキスタン以外では初めてのコンサートという事で話題性も高い。今回は「フェスティバル コンダ・ロータ2006 ラマダンの夜」というアジア音楽フェスティバルの一環としてのコンサートで、Kayahan Kalhorというイランのミュージシャンとのカップリング。

場所はシアター・コクーン。シートの造りはオーチャードの方が上だけど、オーチャードは少し相性が悪い気がしているので、別に問題は無い。

1stセットがFAF。ステージ上に8人(覚えていない・・・)ほどのメンバーがあぐら状態で座り込む。演奏が始まる。手拍子、タブラ、ハーモニウム、コーラス、そしてメインを取るFAFの歌。グルーヴも存在感も文句なし。だけどやはり、歌の力の凄さが耳に焼きついた。オレもいくらかライブで色んな歌い手を聴いてきたけれど、この人の歌は、ちょっと次元の違うものだったと思う。もちろん、例えばJoaoなんとかは持ち味は全然違うけれど、だけどあれを聴いてしまってからは、今はFAFを賞賛する以外は何も言う事が浮かばない。




続いて2nd、Kayahan Kalhor。まるで知らない人だし、どんな音楽をやるのか、手元にあったチラシで想像するしかなかった。そのチラシにはカマンチェというヴァイオリンの先祖にあたる楽器を使い、即興的な物を含みながら演奏を行う、とある。そして今回は、サントゥールという楽器とのデュオという事もわかった。どちらも全然知らない楽器だったけれど、だからこそ、どういう音が鳴るのか楽しみだった。

演奏が始まる。最初は音を詰め込まない、弱音系のような演奏。それぞれの楽器の音に意識が向く。ケマンチェは、ニスを塗っていないヴァイオリンのような音、という感じで、時折中国の二胡を思わせるような音も聴こえる。サントゥールは、弦のはられた箱状ののもを、フォークのようなブラシのようなもので叩きながら音を出す。透明感ある響きが特徴的。それらの音での演奏は、決められた部分にアドリブをはさみながらという感じで進行する。その音の気持ちよさに最初は感銘を受けていた。だけど、この演奏が長い。結局、1時間15分ほどの演奏時間だったと思う。これは、1時間の即興を聴きなれているオレでも、ハッキリ言って辛かった。途中、何度か演奏が終わると思えるような瞬間があったけれど、それでも演奏は止まらない。「んー」と思い、周りを見渡してみる。やはり音楽に嵌っている感じは少ない。単純な演奏の長さだけじゃなく、終わると思わせるところからまた元のフレーズに戻していくという構成は、音楽に引き込むには力不足だった。中盤を越えて演奏が終わるところまで、「どうやって終わらせるつもりだろう?」とか、楽しい状態ではあまり考えない事が頭に浮かんでいた。

演奏そのものは良かったと思う。だけど、少し自己満足気味な構成は、何も知らない聴衆にアピールするには、退屈なものだったと言うしかない。