鈴木大介 / Brandon Ross / ツトム・タケイシ

今年は武満徹没後10周年らしい。あれから10年も経ったんだと今ごろ気付いた。そんなに武満の音楽を聴いているわけでは無いのだけど、『Novenber Steps』は少なくても年に数回は耳にする。

10周年という事で武満関係の色々なものが出ているらしいけれど、この間買ったばかりの鈴木大介 / Brandon Ross / ツトム・タケイシによる『Quotation of Dream』というアルバムが、武満の映画音楽をカバーしたものだった。武満の映画音楽といえば、『武満徹:「自選」映画音楽集』というCDをなんとなく持っていて、比較してみたけど残念ながら『Quotation of Dream』に入っている曲は無い。『Quotation of Dream』の曲目をざっと見渡して、映画のタイトルは知っていても映画自体は見たことも無いし、その曲も知らない。カバーというのはやはり元を知っていて聴いた方が面白みが増すのだけど、今回はそういう聴き方は出来なかった。

そして鈴木大介というギタリスト、オレは初めて知る人なのだけど、元々武満の音楽を結構演奏しているらしい。クラシック系のギタリストという事になるのだろうか。その彼がBrandonとタケイシと演奏するという事だけでも興味深い。Brandonはギタリストでタケイシはベーシストだから、2ギター+1ベースというかなり特異な編成。

Brandon Rossは70年代から活動しているギタリストで、その変遷が面白い。デビュー時にはArchie Sheppの『There's a Trumpet in My Soul』に参加して、恐らくロフト・ジャズシーンの周辺のアヴァンギャルドなギタリストだったはず。それが90年代にはADのバックでギターを弾いていたり、Cassandraが大きく成長する事になった『New Moon Daughter』などで重要な役割を果たしている。そいうバックアップ的な活動もしながら、Harriet Tubmanのような如何にもNYのアングラ的なアヴァン音楽もやっている。そんな活動の中、2004年に初めてソロアルバム『Costume』は、アヴァンな面ではなく、繊細な面を出した歌物のアルバムで、何度も繰り返し耳にした。

ツトム・タケイシは日本人だけど、活動の拠点が殆どNY。昨年のBradonのライブのベーシストは彼だったはずで、他にも藤井郷子のCDでも名前を見かけるけど、まだ個性は把握していない。

『Quotation of Dream』は、映画音楽ならではの主題と、フリー・インプロヴィゼイション的なアプローチが混じりあった音。2ギターはどっちがどっちかわからないけれど、柔らかくも端正な音で、音数が増えても息苦しくない。タケイシはベース特有の太い音を多用せず、音響的と言えそうな演奏をする。









鈴木大介 / Brandon Ross / ツトム・タケイシ 『Quotation of Dream』




第18回高松宮殿下記念世界文化賞音楽部門というものを、Steve Reichが受賞したとか。で、ちょっと歴代の受賞者を見てみてると、BoulezとかBernsteinはわかるとして、Ravi ShankarやOrnette Coleman、そしてOscar Petersonという名前が・・・。なんか日本らしくないアグレッシヴな選択。誰が選んでるんだろう? 出来れば生前に武満にも取らせて欲しかったけれど、そのうちStockhausenとか、さらにはSonic Youthなんかが選ばれたら面白い。いや、マジで選びそうな予感。