Bob Dylan

前作『Love and Theft』はあの9.11の時に発売された。それ以来の新作『Modern Times』、あれから5年経って、やっと新作が出てきた。

比べるなと言われても、やはりNeil Youngの活動とBob Dylanは比べてしまう。この5年の間だけじゃなく、90年代を通して充実した活動を行ってきたNeilと、固定ファンや評論家には高い評価を受けながらも、新作の音で新たなファン層を捕まえる事の出来なかったと思われるDylan。90年代のDylanの作品というのは、60年代70年代のDylanを知っていて、それで成り立つものだと思う。あの頃のDylanの曲を知らずに、80年代90年代のDylanの作品を聴くという事は考えにくい。なぜそんなことを言うかと言えば、楽曲的に70年代までのDylanの作品と、それ以降のDylanの作品では粒の揃いに違いがあると言えるからで、60年代70年代のDylanの名曲や代表作はDylanファンじゃなくて知っているはずだけど、80年代90年代のDylanの名曲や代表作をDylanファン以外で知っている人が多くいるとは思えない。そのせいでDylanを聴くという事は、必ず過去のDylanと現在のDylanをリンクさせながら聴かなければ成り立たないと思える。と、そういう事を常々思っているオレは、だからこそDylanには、自身の過去の名曲と張り合えるような楽曲を含んだ新作を望んでいた。そして『Modern Times』。ここで聴かれるDylanの曲や音は、ファンの想像の範疇内のものだろう。ブルースであったりカントリーであったり、そういうものを上手く取り込んでというか、かなりこなれた形で楽曲を練り上げている。だけどここにはDylanファン以外が喜びそうな楽曲は見当たらない。80年代90年代を通しての最高の楽曲だと思える「Love Sick」に並ぶような曲も無い。

オレが購入したのは当然のようにDVD付きの限定盤だけど、これもまたいつものように、DVDを見るのは後回しにして、歌詞の対訳を斜め読み。曲の雰囲気からはわからなかったけれど、含みのあるラブ・ソングと言えばいいのか、いかにもDylanらしさのある言い回しが目に付く。Dylanの歌ではあたりまえの様に言葉が重要な位置を占めるはずで、それを対訳を読みながら理解しようとするオレと、ストレートに言葉の入ってくる英語圏のリスナーや、そういう人達と同じぐらい英語の理解能力がある人達にとっては、曲の聴こえ方は違ってくるのだろう。だから本当は、そういうトータルでの聴こえ方が出来なければDylanの作品を理解出来ないだろうし、そうでなければDylanについてわかったような事も言ってはイケナイような気もするけれど、不十分な状態のオレの耳で聴いたらこういう風に感じるという事。









Bob Dylan 『Modern Times』




『Modern Times』のジャケットは、久しぶりにDylanの写真を使っていない。オレはあまりDylanの作品のジャケットというものを評価していなくて、これまでのアルバムならば、『Hard Rain』と『Oh Mercy』ぐらいしか良いと思えるものは無かった。『Modern Times』のジャケットはあまり評判が良くないようだけど、オレにとってはDylanのジャケットで3枚目の良いと思えるジャケット。