芳垣安洋 / 井上淑彦 / 鈴木正人

真夏の芳垣安洋2Days。昨夜はその初日。テナーサックスの井上淑彦とベースの鈴木正人とのトリオ編成。井上は、日本のジャズシーンでの活動の長い人だけど、ジャズ好きのくせにジャズのライブはあまり見ていないオレには、こういう機会がある事が必要。鈴木は昨年ONJOとのカップリングだったSigh Boatで見たけれど、あの時は音が良くなかったので、あまり音の印象が無い状態。

ライブは記譜されたものを使って行われた。それでも、恐らく大まかな構成ぐらいだと思う。芳垣はノーマルなドラムセットだけではなく、いつものように手を替え品を替え、色んな小物を使った演奏。多彩で多芸。リズミックな音の全てに興味を持っているんじゃないだろうか。

鈴木はアコースティック・ベースを弾く。正直言って、昨夜の演奏を聴くまで少し見くびっていた。Little Creaturesは、特にテクニカルなバンドではないため、なぜこういう場に出てくるのだろうと思っていた。だけど昨夜の演奏は、オレの思い込みが勘違いであった事を音で証明してくれた。支配的な太い音よりも線の細い音を好む傾向があるように思ったけれど、今まで聴いたアコベ奏者の中でも、かなり色んな音を持っていると思う。

そしてサックスの井上は、ジャズ畑で培ったいかにもジャジーな音を聴かせる。昨夜はジャズな曲ばかりではなかったけれど、それにも対応したソロをとる。音を詰め込むように吹き捲くるタイプではなく、慎重にラインを選んで吹いているのも個人的には高感度高い。昨夜唯一のリード楽器なのだけど、それを渋くこなす姿はカッコ良かった。




昨夜の芳垣の音を聴いていて、アルゼンチン音響派のCDを思い出した。あのCDで聴けた感覚の音と芳垣の音は近いものがある。実際、Kabusackiの東京でのセッションCDや、先月のアルゼンチン音響派のライブにも参加しているし、日本の音楽シーンの牽引者とアルゼンチンの先鋭的なシーンが音的に近いものを持っているという事は面白いと思う。