Sleep Walker

10年ほど前にMondo Grossoというバンドがあった(今でもあるじゃねーか!!と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、オレが言っているのはあくまでもバンドとしてのMG)。そのMGは、簡単に言うとクラブ音楽を生演奏するバンドだった。だけど普通のバンドと違って、ヴォーカルがシンガーではなく、ラッパー、しかもフランス出身のB-Bandjというラッパーを起用していた。このバンドが『Born Free』辺りから話題になりだして、人から借りたCDを聴いたら予想以上にカッコよく、それからは注目に値するバンドと思っていたのだけど、そのすぐ後にバンドのメンバーが大沢伸一を残し全員脱退。以降のMGは、大沢のソロ・ユニットになった。そのソロになってからのライブを一度だけ今は無き赤坂ブリッツで見たのだけど、悪くは無いけれど、やはり個人的には消化不良のライブだった感は否めない。そして、その前だったか後だったかに見たSoul Bossa Trioのライブでは、ゲストにB-Bandjが登場して会場を大いに盛り上げた(オレが個人的に盛り上がっただけじゃなく、ホントに会場が盛り上がった)。まあ、結局オレはB-Bandjがいるバンドという事を面白がっていたのだと思うけれど、今のMGよりも、バンドだった頃のMGの方がカッコよかったという事は、CDを聴けばわかるはず。

で、そのバンドなMGに参加していたほかのメンバーのうち、中村雅人というサックス奏者と、吉澤はじめという鍵盤弾きがベースの池田潔とタイコの藤井伸昭と結成したのがSleep Walker。2003年に1stアルバムを出し一部で話題になっていたけれど、まあ、特にその2人に興味があったわけじゃないので、中古で出回ったら聴いてみるかぐらいの気持ちだった。

そのSWが新作『The Voyage』を発表。それにも「ふうん」ぐらいしか思っていなかったけれど、何故か1曲ゲストでPharoah Sandersが参加という事を知り、「げっ」と思いながら慌てて購入した。

「クラブ・ジャズの顔をした骨太なジャズ」という感じの風評だけど、何度か聴いてみても「それはちょっと違うんじゃない?」と思う。確かに熱い音を持っている。だけどやっぱりクラブ・ジャズという言い方が当てはまる。それは、ジャズ・バンドというのは同じバンド内であっても、どこかでやり合うという場面があって、そのやりあいのやり取りがジャズが他の音楽との大きな違いだと言えるからで、SWに関して言えば、そういう場面は無い。

そして、冠のつかないジャズではなくて、あえてSWを聴く意味というものを考えれば、それは曲のとっつき易さじゃないかと思う。少なくても今作のSWは、ラテン・タッチのジャズだと思うし、そういう音の方が普通のジャズよりもとっつきやすい。そういう事を踏まえると、SWがジャズを聴く入り口になる事は悪くないと思う。









Sleep Walker 『The Voyage』




若干辛辣なインプレだったかもしれないけれど、なんか妙に持ち上げられている状況の中で、少し期待を持って聴いたという事が影響している。わざわざ従来のジャズとして扱わなくても、クラブ・ジャズと思って聴けば、悪くない。それになんか夏っぽいので、多分9月あたりまでは結構聴くと思う。

それと、Pharoah Sandersの参加に惹かれて購入したのだけど、よく考えればオレはそんなにPharoahが好きなじゃなかった。特に、90年代に入ってからのアルバムはちょっとイマイチだったりして、最近は新譜が出ているのかすらもよくわからない。でも、久々に聴いたPharoahはまだまだ頑張っていて、もちろん60年代の、あのColtraneすらもトーンだけで負かしてしまいそうなとんでもないパワーは身を潜めたけれど、ラテン・タッチの曲で、それにあわせながらもらしいソロをとるあたりは、まだまだ健在という事を示している。

ついでに、もうちょっと言うと、なんかピアノは全体的にMcCoy Tynerっぽい。それと4曲目の「Afloat」。これのワルツ調のイントロ、どう聴いても「Fire Waltz」にしか聴こえる。