Unbeltipo Trio

昨夜はW杯決勝のせいでかなり睡眠時間の足りない状態だったけど、Unbeltipo Trioのライブを見に行った。ライブを見る側もそれなりのコンディションじゃないと楽しめない事もあるので、こんな状態で行ってもダメかもと思いつつ、足が向く。

ボーっとしつつ開演を待つ。演奏が始まる。相変わらず強烈、というよりも今までの中で一番音が尖ってないか?、と思う。オレの睡眠不足のせいとも思うけれど、よくわからない。わかるのは、ステージで鳴っている音が凄いという事。

今堀恒雄という人は、その華奢な風貌からは想像しにくいけれど、アグレッシヴな音とフレーズを使う。そしてライブを見ながら思ったのは、全盛期の神がかっていた時のJohn McLaughlinを聴いてるかのようだという事。あのMilesのバンドでのMcLaughlinがこの時代に生まれ変わって弾いているんじゃないかと思った(ちなみにMcLaughlinは一応現役ミュージシャン)。ナスノミツルは太い音、尖った音でグルーヴを演出しながら、ベースにしか出せない重低音でのフレーズをここぞという時に決め、今堀とのコントラストを演出。

佐野康夫もクールな叩き方からは想像出来ないスピード感。このスピード感は、恐らくオレが見た事のあるタイコ叩きでは最も優れている。今堀の複雑な構成の曲であれだけ安定したスピードを出すのは、並大抵ではないはず。打ち込みも使う今堀が選ぶ人なのだから、これだけのスキルを持っていなければ務まらないのだろう。

昨夜のライブで初めて見る事が出来たのが、今堀のアコギでのソロ演奏。時々そういうライブもやっているようだけど、タイミングが合わず未見だった。『Joujoushka』に入っている「Fake Rose Garden (Short Version)」という曲でアコギを弾いていて、この曲がものすごく好きなオレは1度今堀のアコギをライブで聴いてみたいと常々思っていた。今堀のMCによると、ライブ毎に1曲必ず新曲をやるというノルマを自身で持っているらしく、昨夜もそのノルマをこなしたかったらしいのだけど、その新曲のバンドとしての練習がままならなかったようで、それならばという事で新曲「UBT16」をアコギでソロ演奏という事にしたらしい。思わぬ出来事で今堀のアコギを聴く事が出来たのだけど、これがまた、今まで聴いた事の無いような弾き方。残念ながらその指使いを見れるようなところに座っていなかったのだけど、1ストロークで上と下から弦を弾いているような感じ。アルペジオの様に流麗な連なりではなく、ゴツゴツとした粒の立った音で、もし昨夜のライブでその音しか面白くなかったという気持ちになったとしても、後悔する事は無かったと思う。



ライブを見る度にこのバンドが好きになる。全員がクールな雰囲気を持っているのもいい。



どうやら久々に新譜を出す気になったらしく、昨夜も録音していたらしいのだけど、ライブ録音のCDと、前にライブで言っていた大きな編成というのが新録のCDでの事らしく、それを年内にとって来年には発表するつもりらしい。Unbeltipo Trioよりも大きな編成と言えば必然的にTipographica(個人的にはあまり好きじゃない)が頭に浮かぶけれど、Tipographica解散から10年近く経って今堀がどういう音を提示するのか、興味深い。









Unbeltipo 『Joujoushka』









Tipographica 『The Man Who Does Not Nod』









Tipographica 『God Says I can't Dance』




しつこいけどW杯。オレ自身がサッカーをやっていた時は、FWからDFまで、どこでもこなすタイプだった。サイドでも真ん中でもどこでもやる。なんならGKやってもいいとすら思っていた。だけどやっぱり好きなポジションはFWで、うっかりMF、しかも真ん中(当時はセンターハーフと言っていた)をやろうものなら、バランスを考え、自分のやりたいプレイが出来なくてあまり面白くなかった。だけどFW、とくにウイングポジションをやる時はサッカーがこれほど面白いと思った事は無く、DFやる時も出来ればサイドをやりたかったのだけど、今ではその名を聞かないスイーパーをやって、抜かれたら終わりという「オレのせいかよ」と言いたくなるポジションもよくやった。

だからそれなりにどのポジションをやる事の気持ちもわかるのだけど、今大会のイタリアのカンナヴァーロは、オレが至上最も感銘を受けたDFだった。抜かれないというのはDFにとって最も重要で、それでもダメな時は、プロはファールを犯してでも止めてしまう。そいうポジションはDF、しかもセンターというのは抜かれたら致命的なポジションなわけで、そのポジションでカンナヴァーロは、いとも容易く相手FWからボールを奪う。時にはスライディングというリスキーな仕掛けをしながらボールを奪う。相手のFWがゴールエリア付近でカンナヴァーロと交われば、殆どボールを奪われていた。それを見てオレは、サッカーにおける芸術的なプレイが攻撃の時のみではない事を彼はオレに気づいた。しかも驚くべき事に、今大会でカンナヴァーロは1枚もイエローをもらっていない。荒れた大会だったと言われる今大会で、最も試合数をこなしたチームのセンターバック、しかもフル出場のセンターバックが1枚もイエローを貰わずチームが優勝したという事実を考えれば、MVPは彼が貰うべきである事は言うまでもないはず。



それと、ジダン頭突き事件。はっきり言えるのは、例えマテラッツィの挑発が現時点で報道されているような許されない言葉であったとしても、ジダンの行為そのもは正当化出来ない。サッカーの試合中という興奮した状態において、あえて相手を挑発してくる選手に対して、その挑発に乗って頭突きをかますなんてのは、一流であればこそ許されない事で、ジダンの様に時代のスター選手のやる行為では無い。それを「許す」なんていう論調のフランスのマスコミは、自国のサッカー少年達に悪い影響を与える事になるという事に気づかないのだろうか? 自国のスターだからこそ、その行為を厳しく批判し、その上で彼の気持ちを理解すべきだと思う。それにそもそもジダンは今回が初めての「恥ずべきプレー」では無いのだから、そこをもう少し考えるべきだと思う。

と、そうは言っても、ありえないことだけど、もし自分がジダンの立場だったとしたら、自分にとって許したくない言葉を吐きかけられたなら頭突きじゃなくて、即、手を出したんじゃないかと思うけど。だから、ジダンの行為はサッカー選手としてはダメだけど、人間としては理解出来ない訳じゃない。

と言っても今はまだ、マテラッツィが何を言ったかは分からないので、今後の展開を見守るしか無い。