Tom Verlaine

Televisionを聴きだしたのは3rdの『Television』からで、それ以前はNYパンクというカテゴリー自体に興味が無かったので、重要なバンドの一つという事は知っていても、なんとなく敬遠していた。もちろん後追いだけど個人的にはUKパンクの音が好きで、Sex Pistolsのやさぐれたロックンロールや、Clashの直情型のパンクからレゲエを取り入れたレベル・ミュージックとしてのステップなどには共感を覚えていた。それに比べてNYパンクは、文学的とかいう言葉が出てくるせいでオゲージュツの臭いがしてしまう事と、結局その文学的というのは、Doorsの影響下の事なんじゃないか?と思い、LAという明るい太陽のイメージがあった場所の裏面にあるものを表現したJim Morrisonに比べれば、NYというカッコつけの土地でオゲージュツぶった連中の出す音なんて、結局ノー天気な暇つぶしにしか思えなかった。

そういう勝手な思い込みや勘違いからNYパンクを避けていたけれど、TVが92年に14年ぶりの新作を出した時になぜか手を出してしまい、勝手な連想ゲームで聴かず嫌いをしていた事に気が付く。その後、結局2年前の来日公演を見るぐらいTVはお気に入りのバンドになっている。

そのTelevisionの中心的人物といえば、やはりTom Verlaine。彼はTV解散後から時折ソロアルバムを出しているけど、最近まではそんなところまで手を出す気にはなっていなくて、今回発売された新作も最初はシカトを決め込んでいたけれど、レーベルがThrill Jockeyで、更に何故か同時に2枚のアルバムを出すというところに引っかかり、とりあえずはインスト集の『Around』を聴く事にした。

1曲目のイントロを聴いていると、まんまTVの曲な感じがして、ここからTVっぽいリフでも入るのかと思ったら、意外にもBill Frisellを思わせるアメリカーナな感じの展開。アルバム全体にそういう雰囲気が漂っていて、一通り聴き終わった後、もう一度聴いた。最初に聴いたときにはFrisellを思い浮かべたけれど、なんかやっぱり違うと思っていて、でも、なんとなく聴いたことのある感じ。と考えていたら、スライドっぽい音がして「そっか、Ry Cooderだな」と気付く。Verlaineという事で、もう少し鋭利な音を期待していたという事もあり、若干期待はずれの感は否めないのだけど、だけど、この手の音は嫌いじゃないという事で、ちょっと複雑。