Mary J. Blige

R&B系の歌手で、デビュー時からそのキャリアをずっと聴いているのはMary J. Bligeぐらいしかいない。1stにあたる『What's the 411?』でいきなりヒップホップ・ソウルと言われるスタイルを確立させ、それ以降そのジャンルのイノベイターとして、数々のフォロワーが現れても、Mary Jの地位が揺らいだ事は無い。但し、相反した事になるけれど、現在においてはヒップホップ・ソウルというスタイルも既にR&Bというジャンルに飲み込まれた感はあって、今更Mary Jにその言葉を使う必要も無いのだろう。

もうすでにMary Jは、安定期に入ったと見てもいい。それを最新作の『The Breakthrough』を聴いて確信した。これは昨年末にアメリカで発表されたのだけど、キャリアをフォローしていると言いながらついこの間まで購入していなかった。それは聴く前から音の予測が出来た事と、その音をこのアルバム発表時のオレは欲していなかったという事がある。

現在のMary Jという歌手は、深みがあったり、器用な歌い手と言うわけではなく、硬めの声質ながらも、パワフルで小細工をしない正面を向いた堂々とした歌いっぷりが持ち味だと思う。このアルバムでもその本領が発揮されていて、このアルバムで初めてMary Jの歌を聴いたとしても、彼女の持ち味を味わう事は出来る。それは頼もしくもあり、少し寂しい事でもあるのだけれど。