Arthur Russell

数年前に『World of Arthur Russell』というCDがSoul Jazzから出て話題になった。その時は「もういいかげんに、こういう細かいところまで追ってられない」と、シカトを決め込んだ。だけどその後出た『Calling Out of Context』と『World of Echo』は結局持っていて、自分でも「はあ」と思う。

よく知らないミュージシャンにもかかわらず、持っているCDは輸入盤なので解説が英語。ネットでちょっと調べると、チェリスト(これは聴けば分かる)とか、ゲイであるとか、中性的な歌(オレには普通に男の声に聴こえる)だとか、ディスコ音楽であるとか(『World of Echo』はそういう印象ではない)。

そしてついこの間リリースされた『First Thought Best Thought』を聴く。ここにはArthur Russellの音を語る際に用いられるディスコという言葉に当て嵌まるような音はない。「Instrumentals」や「Tower of Meaning」と名づけられた楽曲は、穏やかな表情の室内楽といった印象。「Reach One」のフェンダー・ローズは楽器の特性を生かした響きが印象的で、「Sketch for the Face of Helen」の微音を使った展開は、現代の先鋭的なエレクトリック・ミュージシャン達の音と同じような印象を与える。