Mats Gustafsson

Mats Gustafssonの音をよく聴いているわけではない。初めて意識して名前を目にしたのは、Sonic Youthとの共演作『Hidros 3 (To Patti Smith)』を聴いたときだった。その後、ONJOへの参加で再びその名前を見て、日本のDoubtmusicから発売された『Catapult』を購入。その『Catapult』はバリトンサックスのみを使ったソロ演奏で、なかなか凄い作品だった。

そのMatsが来日し昨夜のピットインでライブを行ったので、そのライブを見てきた。ギリギリ立見がいないぐらいの集客だろうと思っていたら、立見がかなりいた。予想外の集客だったけど、共演が大友良英・ヨシミ・Jim O'Rourkeという面子なら、これぐらい集まるのは当たり前か。

1stセット、まずは大友のギターとの即興デュオ。Matsはバリトン(少し弄ってあるかも)を使う。Matsのバリトンは、「グォン」といった、なんて言えばいいのか、水道管とか土管がなっているような普通とは違う音が鳴っている。それに大友の少しパンキッシュでフリーキーな音が絡み、ぶつかり合うように演奏を作り上げていく。

続いてはヨシミとのデュオ。ヨシミは坂田明とJimとのセッションの時と同じように、カオスパッドを使ったボイス・パフォーマンス。Matsはトランペットを下向きにして、トロンボーンのようなスライドバーの付いた楽器を、笙のように持って吹く(上手く説明できない・・・)。若干人の声に近い音の出る楽器で、このセッションは比較的穏やかな音。

続いては、一見ソプラノサックスのような楽器を使ったMatsのソロ。この楽器も普通じゃない。まるでバスクラのような低音が出る。その音と、サックス的な音が混じった演奏で、時折2人の奏者がいるように思える瞬間がある。

ここまでが1stセット。なんとわずか30分程度だった。

2〜30分程度の休憩をはさみ、2ndがはじまる。Matsの今度の相手はLotta Melinという、多分Matsが連れてきた人。ステージにセッティングされている楽器からいくと、彼女の楽器はテルミンだろうと思っていたら、なんとMatsのバリトンにあわせてダンス・パフォーマンスをはじめる。もちろん、Matsの吹くのは即興で、とても流麗な音ではない。それにあわせて踊るのだから、やはりその動きはコミカルさがある。だけど、笑っていいのかどうかわからないので、若干ニヤつきながらそのステージを見ていた。そして途中からLottaはテルミンを操りはじめ、テルミン自体が演奏時に若干パフォーマンス的な動きになることを考えれば、彼女に最も適した楽器だと言えると思う。

そして次はいよいよお待ちかね、Jimの登場。今回のJimは、卓物が無くギターセットだけを使うようで、存分に彼のギターが聴ける。大友と同じくギターでの演奏になったのだけど、やはり方向性の違いか、Jimの音は対峙では無く、スペースを作りながらの演奏。Matsも上手く反応しながら、情景を作り上げている。やはりJimは凄い。と思っていたら、なんとギターにアクシデント(演出?)。それにもめげずにJimは、足元のエフェクターやらペダルやらを使って音を出す。演奏終了後、ギター(セミアコ)を振って、「カランカラン」という音を聞かせて笑いを取る。演出なのかマジなのか、わからん。Fホールに棒を突っ込み、「カランカラン」いってるものを取り除くような素振りで音を出す。観客にウケル。Matsが反応し音を出し始める。そして他のメンバーがステージに上がり、5人でのセッションが始まった。

本編終了後、アンコールをやって、今日の演奏者がステージを降りるとき、Jimは自分のギターを蹴る素振りをした。うーん、ギターのアクシデントは、演出じゃなくてマジだったのだろうか・・・。