Pat Martino

「恐ろしく粒の揃った音の羅列」というのが、オレのPat Martinoに対するイメージ。ぶっといゲージを使ってギターを弾くPatの音は、フリー系の優れたギタリストのどこに転ぶかわからないラインと同様(場合によってはそれ以上)の緊張感を持っている。そのPatがブルーノートへ移籍して5作目の新作、『Remenber: A Tribute to Wes Montgomery』を発表した。タイトル通り、Wes Montgomeryに捧げた作品集。オレは残念ながらWesについては『Full House』ぐらいしか聴いて無い為、知ったかぶりを言えない。というより、指弾きのギタリストであるという事ぐらいしか個性をつかめていない。なので単純にPatの演奏に注目する。

1曲目、「Four on Six」で完全に掴まれ、その後は終わりまで一気に聴く。Patならではの太い音。大理石のピックを使っているといわれるようなゴツゴツした音で、比類なきソロを弾く。ジャズは小洒落た音楽なんかじゃないという事を強く訴えかける、シリアスな音。



Patは50年代から活動を続けているジャズギタリストで、そのキャリアの中で大きな病気を患い、現役引退の憂き目を見てきている。その後復活しつつも、調子の出ない状態が続いていた。それがブルーノートへの移籍初作の『All Sides Now』でPatここにありを見せつけ、それからは順調に活動を続けている。音楽のジャンルを問わず、ギターと言う楽器が好きなオレでも、ジャズにおけるギターというものをあまり重要視していなかった。それは、ジャズにおいてフロントには管楽器、コードバッキングではピアノという、ジャズの代名詞のような楽器達の音に、ジャズギターの音は埋もれてしまう事が多いと思っていたからだ。だけどそれは、ロック的なギターの音からギターに着目するようになった事に原因を感じて、ギターという楽器の音を注目して聴いていけば、今まで埋もれていたように聴こえていたジャズにおけるギターの音の魅力に気づく。そうやってジャズギターを聴くようになり、PatやJim Hallのような優れたギタリストの音を楽しめるようになって、より一層、現代の優れたギタリスト達(例えばBill Frisell)の音の魅力が伝わるようになった。



古い世代に属するPatだけど、この音の魅力は全然衰えていない。『Remenber: A Tribute to Wes Montgomery』では管楽器がいないという事もあり、存分にPatのギターを聴く事が出来る。そしてこの状態のPatなら、ピアノの存在すらも蛇足に感じる場面があり、こうなればすぐにでも、トリオ編成での録音をやって欲しい。




ちなみに店頭に出回っている輸入盤は、レコファンタワレコではCDDAで、Disk UnionはCCCDだった(歩き回った)。

東芝EMIのHPを見る限りセキュアCDという名のCCCDという表記は無いのだけど、国内盤はCDDAなのだろうか?、既に輸入盤を購入したからいいのだけど、気になる。