Ornette Coleman

Ornette Colemanといえばフリージャズの創始者的な扱いで、ジャズを聴く人ならばその名前耳にした事がある。はず。実際にOrnetteがフリージャズを作ったかどうかはそんなの調べようが無いわけで、象徴として、Ornetteの名前が挙がることが定着している。オレの好きなジャズというのは基本的にフリージャズから派生したものと言っていいものばかりだから、オレも当然の様にOrnetteの音を聴いている。というか、多分初めて買ったフリージャズってOrnetteの『The Shape of Jazz to Come』だと思う。それ以来新旧含めて、OrnetteのCDというのはほぼ聴いている。のだから、オレは多分Ornetteのファンなのだろう。だから今回の来日、やはり見に行く事になった。

数年前にもOrnetteは来日していて、実はそれも見ている。ところがその時は、『Skies of America』という昔のアルバムの再現というもので、Ornetteのグループ(確かPrime Timeだったはず)+クラシックのオーケストラと言うスタイルで、はっきり言ってつまらなかった。好きなミュージシャンだからこんな事は言いたくないのだけど、でも、つまらなかった。そんな事があったけど、あのコンサートは特別編成だったわけで、今回の来日は、レギュラーグループでの演奏なので、あんなにつまらないものを見せられることは無いだろう。と、考えながら、前回と同じ且つ、オレと相性の悪いオーチャードホールに向かう。

今回のジャパンツアーは前座として山下洋輔が付いて回るらしく、まずはその山下のソロピアノでコンサートが始まる。山下洋輔も、日本のジャズシーンではビッグネームなわけで、一度ぐらいは見てみたかったけど、とても単独のライブを見に行く気にはならないので、今回は良い機会。ある程度予想は付いていたけど、結構ガンガン弾く。気分を盛り上げるには悪くない演奏。ピアノの響きも、まあまあ良いんじゃないかと思った。

山下の演奏が30分ぐらいで終わり、ステージは暗転したままでセットチェンジを行う。暗転したまま待つというのは結構あれだけど、まあ仕方ない。恐らく15分ぐらい待って、やっとOrnetteと彼のグループが登場。サックス&トランペット&ヴァイオリンのOrnetteに加えて、ドラムでOrnetteの息子Denardo ColemanにTony FalangaとGreg Cohenという2人のベーシスト。変わった編成だけど、Ornetteのサックスが存分に聴けるのだから問題ない。

演奏が始まる。Ornetteは曲のテーマらしきものを吹く。2人のベースシストは、一方がアルコでもう一方がピッチカート。ドラムのDenardoは、、、正直言って印象が薄い。コンサートを通じて印象が薄い。殆どソロの瞬間は無かったと思う。まあ、Denardoはしっかりリズムキープが出来ていればいい。

演奏は進むけど、(オレは)何かイマイチ盛り上がらない。Ornetteの曲はどれがどれと言うほどの記憶はしていないけど、どんな曲でもOrnetteらしさというのがあるので、曲が何であるかはあまり関係ない。なのに何故か気分が・・・と思っていて、気付いた。というか、気付きたくなかったのだけど、Ornetteのソロアドリブが面白くない。音量のコントロールが出来ていなし、早いフレーズは音が団子になっている。しかも、早いフレーズを長く吹くことが出来ない。これはショックだったのだけど、でもOrnetteの年齢を考えれば仕方が無い。ただ、Rollinsが音楽としてはつまらなくても、彼のアドリブは未だにイマジネーションが枯渇していないという凄さを昨年見ただけに、Ornetteのアドリブの弱さは、予想外な出来事だった。

だけど、2人のベーシストの作る空間はなかなか良くて、これが今回の一番の聴き所。アルコ&ピッチカートが基本パターンだけど、時には2人してピッチカートになったりして、空間を作り上げていく。Ornetteのアドリブがよれよれでも、この締まったベースの音が、音楽をしっかり作り上げていた。

Ornetteも全てがダメだったわけではなく、例えば無理なソロをとらずフレーズをバリエーションしている時は悪くないし、テンポの遅い曲では、音量のコントロール以外はそんなに悪くなかった。あの、CDでは刺身のツマ程度にしか思っていなかったヴァイオリンが結構いい。トランペットも思ったより悪くない。それになにより、この編成で音楽するという事は、Ornetteが過去の遺産で食いつなごうとしているわけではないという事を表明している。それが何より今回の収穫だったと思う。

コンサートは終盤に山下を加え、更に1曲女性のヴォーカル(個人的にはイマイチ)を加えた演奏をやったりして、変化を加えていく。

そして本編が終わり、アンコールの拍手の中再びOrnetteがステージに。軽くチューニングをしている音(特にベース)を聴いて、「もしかしたら」と思った。そのもしかしたらは当たりで、あの「Lonely Woman」を演奏。結局なんやかんや言っても、一番聴きたいOrnetteの曲はこの曲で、この曲をOrnette自信の演奏で聴くことが出来た事で、結局オレは大満足。




結構厳しい事を書いたけど、それはやはり、オレがライブに接した事のある他のアルトサックス奏者と比べてしまうからだと思う。John Zorn坂田明、それに林栄一といったサックス吹きの音はホントに凄くて、彼らのような優れたサックス奏者のライブを見たことのある立場では、流石に今のOrnetteのアドリブは満足出来ない。でも、CDで聴けるOrnetteの演奏には惹かれるものも多い。一般的に評価の高い『At the "Golden Circle" Stockholm Vol.1』と『Vol.2』は壮絶と言う類ではないけれど、優れたアドリブを聴くことが出来て、Ornetteのアドリブを聴くという点では一番お薦め。

あと、コンサートで白いサックスを使っていたのだけど、あれはやはりプラスチック製なのだろうか。なんとなくあれ、音のコントロールが難しそうで、音量のコントロールがイマイチと感じたのはそのせいなのかもしれない。