Loose Fur

Loose Furは、WilcoのJeff TweedyとGlenn KotcheにJim O'Rourkeが加わったユニットで、O'RourkeがWilcoの『Yankee Hotel Foxtrot』をプロデュースした時にその副産物として生まれたユニットらしい。1stにあたる『Loose Fur』は聴いてないので迂闊な事はいえないけれど、その1stを『Yankee Hotel Foxtrot』から想像すれば、音響的な展開を加えたジャムセッション的な音だったのではないかと思う。それが新作『Born Again in the USA』ではカントリーライクな、WilcoやO'Rourkeのポップサイドな音から想像出来る様な音になっている。

一聴して耳を惹くような仕掛けは見当たらなく、その仕掛けがないという部分で、実は最初の印象は良くなかった。だけど、気を取り直してO'Rourkeのいるバンドという事を意識せずに聴いてみると、楽曲そのものが魅力のあるものが多いという事に気付く。それも60〜70年代のエバーグリーンな楽曲を想像させ、「Thou Shalt Wilt」なんて、The Bandを連想させる。




『Born Again in the USA』というタイトルは、否が応でもBruce Springsteenの『Born in the USA』を意識させる。そのSpringsteenの『Born in the USA』は当時曲解されて、そのタイトル曲の「Born in the USA」をアメリカ大統領選のキャンペーンに使用されるという、Springsteenの大失態があった。「Born in the USA」は、その歌詞を読めば誰でもあれが単純なアメリカ賛歌ではない事に気付く。複雑な思いを持ちながらもアメリカ人であるという事を再度考えたという曲だと思う(もちろんそれには、単純な意味ではない愛国心もあると思うが)。

あまり政治的なことを音楽に持ち込みそうに無いO'Rourkeだけど、『Born Again in the USA』は、そのタイトルから『Born in the USA』を連想させる事を分かっていてこのタイトルにしたのだろうし、ブックレットの解説でも触れられているように、ここには何か、現在のアメリカに対する含みがあるのかもしれない。



この『Born Again in the USA』を購入して、ウチに帰ってCDを聴いている時に解説を読もうと思い、ブックレットを見たら解説が見当たらず。帯を見ても解説付とあるし、なんどもブックレットを見のだけど、どうみても解説は書いていない。それで発売元のP-VineのHPを探し問い合わせの窓口にメールを送ったら、夜10時を過ぎている様な時間にもかかわらず返答があり、翌々日には解説が手元に届いた。この素早い対応は、もしかしたら購入店に言えと言われるんじゃないかと思いながらの問い合わせだったので、個人的に好印象。P-Vineは、昔からBlues系のリイシューを中心に、徐々に展開を広げてきた会社なので、他のレコード会社と比べて元々印象が良いのだけど、それなりに大きくなった現在では体質が変わったかもしれないと思っていたのに、今回の対応は、今後もP-Vineの印があれば安心して購入出来ると確信させる出来事だった。