Ned Rothenberg

Ned Rothenbergはアヴァン系のCDを聴いていると度々目にする名前で、Altered Statesとの共演盤もある。そういう妙に馴染みのあるミュージシャンは、なんとなく知っている気になるのだけれど、実際にはその個性を掴みきれていない。そのNed Rothenbergは今来日していて、各種の組み合わせでライブを行っている。ピットインでは3Daysのライブが組まれているけど、今回、最も興味のある巻上公一八木美知依とのセッションを見に行くことにした。

客の入りは50人ぐらい。相変わらず何て言うか・・・。

ライブはRothenbergのアルトソロで始まる。アルトソロというと、阿部薫が思い浮かぶけれど、Rothenbergはフリーキーなスタイルとは違って、トーンにそういうものはありつつも、リズミカルに音を組み上げていく。10分を超えるぐらいの長さだったと思うけど、緊張感とグルーヴの伴った、掴みとしては十分な演奏だった。

その後巻上公一八木美知依が加わって、セッションが始まる。1stセットは20分ぐらいの演奏を2回、2ndは、30分ぐらいの演奏と10分ぐらいの演奏を行った。

Rothenbergは度々楽器を持ち替え、BclやCl、尺八まで使った。今回の来日のセッションのリストを見ていても気付くけれど、器用なリード奏者といった印象が強くなった。恐らく、どんなセッションにおいても、ある程度の成果を聴かせてくれるタイプだと思う。自らの冠にもかかわらず、時にはバッキングに回ったような演奏を聴かせて、バランサーとしての役割も担う。

八木さんは相変わらず見目麗しく、あのアグレッシヴな音とのギャップが面白い。彼女の音にBaileyとの共通の音を見つける事は難しくなくて、その音が一つの個性として確立されていると思う。箏の音色を殺したり生かしたりしながら相手の音に反応し、点景の様に音を配置したかと思えば、リフによって演奏を先導する。

巻上は今回が初めてライブに接する機会。巻上の音をそんなに積極的に聴いているわけではないけれど、昨年Tzadikから出た『Koedarake』は楽しいアルバムで、ヴォイスパフォーマー巻上公一という人を理解するにはいいアルバムだった。昨夜のライブではそのヴォイスとThereminを使っていて、面白いパフォーマンスを披露してくれた。Thereminは、一時期はやった頃に演奏シーンを何かで見たことがあったけれど、ライブでその姿を見るとコミカルで面白い。Thereminという楽器の出す音は、思った以上に肉声に近い音も持っていて、始めはその音が出る時は、巻上の声だと思って聴いていた。そして巻上のヴォイスはありとあらゆる技法を持っていて、多種のヴォーカリゼーションから得たパフォーマンスは、今まで聴いた事の無い類のもので、もっと彼の音を聴ける機会を作れればと思う。




本編終了後短いアンコールに応えてくれたのだけど、個人的にはこの手のセッションにはアンコールは要らないと思う。その辺の事を、そろそろオレ達観客の側も考える必要があるのかも。