Ray Davies

BeatlesやStonesはビッグネームすぎで、Whoは個人的に全然惹かれるものを感じないオレにとって、60年代を代表する英国のバンド、愛情を持って接することの出来るバンドはThe Kinksだけ。最初期のロックンロールはもちろんカッコいいし、60年代中期以降のコンセプトアルバムも勿論いいのだけど、オレ自身は「How are You」という、80年代の曲をリアルタイムで聴いて好きになったので、そのリアルタイムなKinksが一番好きだったりする。だけど「How are You」を含む『Think Visual』はアルバムを買えなくて、リアルタイムで初めて買ったオリジナルアルバムは『Phobia』で、これが結局マトモなKinksのアルバムとしては、最後のものとなっている。初めて買ったからか、オレはこの『Phobia』が一番好きなアルバムで、とにかくこれを買った当時はこのアルバムを繰り返し聴いていた。全ての曲が良いとは言わないけれど、それでも1曲だけを繰り返し聴くのではなく、アルバム全体を繰り返し繰り返し聴いていた。でもその『Phobia』も既に10年以上も前のアルバムで、今伝えられているところによれば、Rayが「Ex. Kinks」と表記されているという事もあって、正式な発表も無いうちにKinksはその活動に幕を下ろしたらしい。

そしてそのRay Daviesは、マトモなソロアルバムとしては初になる『Other People's Lives』を発表した(マトモなソロって、なんか誰かみたいな事言ってるな)。あまりカッコよくないジャケットを手にして、恐る恐るこのアルバムを聴いてみる。ソロになるといきなり変な方向を向いてしまうやつもいるので、そういった意味で聴く側が最もナーバスになる瞬間。

だけどこのアルバムに入っている音は、紛れも無くKinks節だった。いや、この場合Ray Davies節とでも言った方がいいのだろうか?、まあそんな事はどうでもいいか。これはKinksが好きなヤツならば、なんの躊躇いも無く手を出していい音。傑作とか完璧とか、そういう言葉はKinksには常々似合わないと思っていたのだけど、今回のRayのアルバムもそういうもの。だからこれは、これから繰り返し繰り返し、肩に力をいれずに聴きつづけられる。