Vincent Atmicus

今では平気な顔をして芳垣安洋が最も好きなドラマーと言えるけど、そう断言できるようになったのは、実は最近の事だったりする。その最大のきっかけが9/5〜7のAltered States16周年記念3Daysの演奏で、特に2日目の「Lotus完コピSession」を見たことが大きい。それまで、芳垣というドラマーのイメージと言えば、強くて大きな音、まあ、男気のある音というイメージだったのだけど、「Lotus完コピSession」で、ラテンのリズムを叩くのを見て、かなり柔軟なリズムを叩ける人なのだと気付いた。それまではASやEmergency!、その他のセッションでの演奏しか知らなくて、そこで聴いていたものはジャズ〜アヴァンの日本のアンダーグラウンドの音楽シーンでの活動ばかりだった。芳垣自身が中心になって演奏しているものと言えばEmergency!ぐらいしか知らなかったのだけど、ちょっと調べてみたら、Vincent Atmicusというグループも立ち上げている事を知り、その最新盤の『Vincent III』を購入してみた。

「アンサンブルを重視したバンド」という言葉から感じるように、先鋭的な音よりも、それまで培ってきたリズムに対する探求、それをバンド全体で表現する事に重きを置いた音になっている。『Vincent III』は前作からの残り物に新録を加えた構成になっていて、もしかしてちょっとイマイチなものかと思ったら、全然そんなこと無く一気に聴き通せる内容になっていた。ラテンやアフリカを思い浮かばせるリズムばかりではなく、スカのリズムやダブの手法等、様々な手段が違和感無く同居している。そして音の構成ばかりじゃなく曲自体に魅力が多く、1曲目のベース主導のリフを聴いた瞬間に、このアルバムがカッコいいものである事がわかる。