芳垣安洋 / 岡部洋一 / 高良久美子 / 内橋和久

12/16から三日間、新宿ピットインでは「芳垣安洋 3Days」と銘打たれたライブが始まる。初日の16日はAnima Mundi Sessionということで、 芳垣安洋(Ds) / 岡部洋一(Per) / 高良久美子(Vib,Per) / 内橋和久(G)でのセッション。行って来ました。当然。

満席と言うほどではないけれど、まあまあの客の入り。BGMがアフリカンなもので、芳垣が選曲したんだろうとすぐにわかる。



20:00から10分ほど遅れてメンバーがステージに登場。

いきなり芳垣安洋のMC、UAの現在の音楽監督で変態ギタリストの内橋、公私共にお世話になってる(ん?)高良、忙しすぎ且つ、自分と同じように腰が悪くなった岡部、と紹介。「このメンバーなので、今日はストレートアヘッドなジャズを」と言うと、皆にウケるも、特に最前列でバカウケしている観客が。

滞りなくMCも終わり演奏が始まる。この夜のコンセプトはわからないけど、楽器の構成から考えて、アフリカンなポリリズム的な演奏なのだろう。まずは静かに音を出し始める。内橋はダクソフォンだけど、人の声のような音は使っていない。少しずつ音数が増える。明確なリズムが入り始める、カッコいい。内橋はギターに持ち替え場の空気を作り出す。高良のVibもそれに一役買っている。芳垣と岡部のリズムが徐々に熱を帯びていきながらも一気に高熱にはならず、一定のグルーヴを作り出す。「そろそろ上げるのか?」と思っていると、徐々にクールダウン。焦らし戦法だった。このパターンで演奏が続き、気持ちのいいグルーヴを感じていると、時折強い音が入って意識が揺さぶられる。そして気が付くと1stセットが終わる。1時間近い1セットを1曲で通していた。

休憩が入って2ndが始まる。芳垣が短いMCの中で、「みんな持っていると思うけど、CD持ってきたので買ってね」と言うと、最前列の客に笑われて、「そんなに可笑しい?、なんか今日は前の列のお客さんによく笑われる」と、和やかな雰囲気。

2ndセットも、各々小物を手に静かな滑り出し。アフリカンな小物の音は気持ちよくて、緩い気分になれる。展開的には1stと同じような感じで、一度ある程度上げておいて少し下げるというパターン。だけどこのセットの方が各々の音が主張の強い音が多くて、若干表情が違う。高良のVibの端正な音でのミニマルなフレーズはReichを思い出させるし、初めて生の演奏を聴いた岡部のパーカッションも相当カッコよかった。芳垣と岡部が叩きあいのような状態になると、お互いに一歩も引かない強い音が出ていてなかなかの凄み。内橋も1stセットより音の上げ方がらしいやり方で、エレクトリックと絡めたギターの音は、他がアコースティックな楽器の中かにあって、(当たり前だけど)違う種類の音を出していた。2ndも気が付くと終了。このセットも1曲で構成されていた。

ステージを下りることなくアンコールに応える。「この編成で短い演奏はやりにくいのだけど」といいながら演奏開始。ここでは一度上げた熱を下げずに、短い時間で音がぶつかり合う。10分ぐらいの演奏だった思うけど、密度の濃い演奏だった。



この日に初めて生の演奏を聴いた岡部のパーカッションは、かなり良かった。スキル的なことはわからないけど、芳垣を向こうに回して、一歩も引かない音を出していた。それまでに何度かその音に接した事のあった高良も、それまでは装飾的な演奏が多かったのに対して、この日の演奏は音の強い楽器の間隙をついて前に出てくる瞬間があって、それが全体のアクセントにもなっていた。この二人の使う小物の音も面白くて、センスのよさも実感した。なんどもその演奏を聴いている内橋と芳垣は、今更何か言うのも飽きるぐらい、さすがの演奏。矛盾した言い回しになるけど、安心できるけど刺激的な音。文句なしのライブだった。