Unbeltipo Trio

昨夜の新宿ピットインはUnbeltipo Trioのライブで、九月のライブに続いて行ってみる事にした。もうこのグループの人気は定着していて、今回も開演前にはほぼ満席という状態だったと思う。開演前のBGMが変わっていて、普段のピットインならやはりジャズがかかっているのだけれど、今回は客層を考慮してか、コーネリアスっぽいのや、なんとBeach Boysが。ちょっと笑えた。



ほぼ定刻どおりに演奏が始まる。今堀恒雄は前回と同じように、打ち込み、サンプラー系を使った演奏から始める。が、前回よりギターに移るまでの時間が短く、その卓越したギタースキルを初っ端から堪能。一曲終わったところで今堀のMC。「忘年会などもあるお忙しい中来て頂いてありがとうございます。」的な発言。今年は仕事上の忘年会は欠席して、その浮いたお金でライブを見ることにしたオレにはちょっと耳が痛い。「ナスノ君は1stはゆっくりやるって言ってたけど、かなりとばしていたような・・・」とナスノミツルに話を振ると、ナスノはそんな事無い(とばしていない)という表情。そして前回と同じようにナスノが「ギター上げてください」と言うと、それに続けて少し小さい声で今堀が「ベース少し下げてください」と、小さな笑いを取る。そして、少し古い曲でライブでやるのは殆ど初めて(今堀の発言)という曲が始まる。プログレっぽい構成の凝った曲で、恐らく30分ほどの曲だったと思うけど、この曲の終盤あたりで九月には聴けなかった今堀の速弾きが聴けた。これがかなり凄まじかった。この速弾きはかなりのもので、オレがライブで聴いた事のあるギターのなかで、最も速いギターだったと思う。続けてアルバム『Joujoushka』に入っている「Desert for Dessert」。この曲は結構気に入っていたので、ライブで聴けたのは嬉しい。15分ほどの休憩を挟んでの2ndは新曲で始まる。この曲は今堀には珍しくプログレ的なアプローチの少ない曲で、ロック的なカッコよさという意味では、このグループの曲では一番かもしれない。続けてプログレ的な曲を一曲と、ミニアルバムに入ってる曲「JD Vers3」(こっちはアンコールだったかも)を演奏。もうこのあたりになると音が凄まじい状態。ただ見入るだけ。凄すぎて思わず笑ってしまうところもあった。アンコールに登場した今掘は、「ありがとうございます。でも、ホントに耳大丈夫ですか?」といいながらギターを調整。「いつも自分ばかり喋っているので・・・」と、他のメンバーに話を振ろうとするも、ドラムを調整中の佐野康夫に「今、それどころじゃない」と言われ、三人とも沈黙の中、楽器の調整を続ける・・・。アンコールの曲も文句なしにカッコよかった。2nd以降の今堀のギターは、1stのプログレっぽい音に比べてロックな音(ここでいうプログレもロックだけど)がしていて、個人的には大満足。



ライブでは否が応でも今堀のギターを中心に聴いてしまうけど、今回もナスノのベースは凄かった。文句無しに、今最も凄いベーシストの一人。オレは一番好きなベーシストと断言しておく。こんな人がベース弾いてたら、ギタリストは色んなアプローチを試せると思う。この男の扱う重低音は、他ではなかなか聴けない。そして九月のライブではあまり個性の掴めなかったドラムの佐野康夫は、今回はタイトな音を聴かせてくれて、音も大きくてよかったと思う。その揺らぎの少ないエディット感の強い音はタイト過ぎるぐらいな感じもあって、横ノリのバンドではちょっと違和感がありそうだけど、ある種のストイックさも感じるこの音は、リズムのアプローチに独特のものを持っている今堀の音楽にあっていると思う。




昨夜のライブは九月のライブより更に良くて、このグループ、凄く気に入った。今のオレにとってはAltered Statesと同じぐらい、痒いところに手を持っていってくれるグループ。ベクトルの違うグループなのにもかかわらず、オレの感じる部分が同じというのは共通しているというのはどうかと思わないでもないけれど、そういう細かいところは抜きにして、こういう音を今、近くで聴けるという環境は幸せな事だと思う。

Unbeltipo TrioとAS、共通しているのはどちらもベースがナスノミツルって事。やはりこの男、いろんな意味でキーマン。