高柳昌行

高柳昌行の「Action Direct」というのは、晩年のソロによるノイジーな表現の事。音盤として残っているのは『Action Direct』、『Inanimate Nature』、『Three Impovised Variations on a Theme of Qadhafi』。どれも現在流通していて、そのうちの『Action Direct』以外の二枚は、Jinya Discというところが発売元になっている。このJinya Discをネットで検索して、そのHPを見ると、バード電子というiPodMac使いなら聞いた事のある会社につながる事がわかる。

そのJiya Disc主催の「高柳昌行ビデオコンサート Vlo.2」があって、それに昨夜行って来た。最近高柳昌行の事を書いていたのもこれの伏線でした。七月にあったVol.1は気付いた時には予約出来ない状況。今回は無事予約できた。会場は表参道から少し脇に入ったところにある、EX'REALMというコミュニケーションスペース。一人¥3,000で定員50名という小さなイベントだけど、「あの場所であの時間帯なら、殆ど利益ないんだろうなあ」等と、余計な事を考えながら出かけた。

会場に入るとスクリーンが二面あって、どの席でも見やすいように配慮されていて好感を持つ。ほぼ定刻どおり(時計見ていたわけではないけど)にJinya Discの斉藤安則という人が出てきて、今回の趣旨を説明。

それによると、「ビデオは自分(斉藤氏)が撮影したもので、プライベートなもの」、「そのビデオが古くなって状態が悪くなりつつあるので、(見ることが出来なくなってしまう前に)公開することにした」等の説明と伴に、自らがバード電子の者(多分社長)であるという事も言っていて、だからJinya Discは本業ではないという話もしていた。この辺の話は大体予想が付いていたけど、本人の口からはっきりそういう話が聞けてよかった。ビデオのスタート前、前日にチェックしたところ、ビデオが壊れて上手く再生できなかった事を告白。「とりあえず大丈夫な状態になったけど、もしかしたら途中で止まるかもしれないので、その時はゴメンね。」との事。不安なスタート。ビデオが始まる。動く高柳昌行の姿を初めて確認する。演奏はベースの井野信義とのDuoで、晩年にも時折ジャズ・コンセプトの演奏をしていた事を確認できる。演奏中に何か気になるのか、高柳昌行がアンプのあたりを弄る。続けて演奏するも、もう一度アンプに触れる。音が出なくなる。演奏中止・・・。「失敗したのでやり直します」と、ビデオの中の観客と、EX'REALMにいる観客の笑いを誘う。気を取り直して始まった演奏は、聴いた事のある曲だけど思い出せない。このスタイルもやっぱりカッコいい。このビデオが終わり、次のビデオは「Action Direct」。ビデオが始まり画と音がでる。音が時々エディットされたような空白があり、「こういう事をやってたのか?、それともビデオの不調?」と思いながら見ていると、いよいよ音が出なくなる・・・。急遽五分間の休憩・・・。再開されたビデオを、「また止まるんじゃないか?」という不安を伴いながら見る。「Action Direct」なCDで聴いていた音は、こうやって出していたのかと、見たことのある写真と同じ様な機材を触っている高柳の姿を見ながら、スクリーンに惹きこまれる。特に「テーブルギター状態にドリルをあててというのは、こういう感じだったか」と、ラップトップに全てが収められている今のノイズとの違いに、考えさせられるものがある。

十五分の休憩をはさんでの第二部は、高柳昌行の盟友、ベースの井野信義が録音された高柳昌行とのセッションするという、興味深いライブ。画無しで『Lonely Woman』の発売記念ライブの音源と二曲、画付きの「Action Direct」一曲との共演。正直言って「興味深いけど実際にこういう試みはどうなんだろう」と思っていたけど、井野信義のベースはなかなか熱い演奏で、違和感を感じることも無くその演奏を聴くことが出来た。なんだか凄く得した気分。Vol.3は来年の6/23(高柳昌行の命日)あたりに予定という事で、それもうまく予約とりたい。




今、改めて『Reason for Being』を聴いている。晩年は「Action Direct」の印象が強いけど、この『Reason for Being』や『El Pulso』のような演奏を忘れない事で、高柳昌行は自分の中のバランスをとっていたのかもしれない。



このビデオコンサートを知った某Blogを見ていると、なんとJim O'Rourkeがこのイベントに来ていたと書いてある。Jim O'Rourkeは『Three Impovised Variations on a Theme of Qadhafi』のライナーを書いたり、『Tribute to Masayuki Takayanagi』というトリビュートを出したりしていて、高柳昌行の音楽に敬意を払っていることは知っていたけど、まさかこんなところにまで来ていたとは。普通ならこれを見るために来日したとは思えないけど、Jim O'Rourkeならそれもあり得るかもしれない。或いは無理やり仕事作ったとか、仕事のスケジュールをこれにあわせたとか。

そういう事やりかねんな、Jim O'Rourkeなら。