高柳昌行

Profile of JOJO』と同時に発売された、未発表音源の『断層』を聴いた。これは1983年のライブ録音で、高柳昌行自身が録音したテープのCD化。音質は良いとは言えないけれど、カナルを使って大きめの音量で聴けばそれなりの迫力を得る事が出来る。一聴すると低音が足りないように感じるけど、ベースのいない編成なので、それは音質の問題ではない。1983年というと、高柳昌行が死の淵から戻ってきてからの録音で、この先のノイズによる表現「Action Direct」への布石の一つといえるのかもしれない。でもここには晩年のノイズによる表現の様な音は無く、ギターの音は予想に反してシンプル。それでも壮絶な音を感じるのは、山崎弘のドラムによるものが大きい。高柳のギターは思ったより淡々としていて、『Profile of JOJO』のギタリストが出した音という事を納得できる。『解体的交感』に代表される阿部薫とのけたたましい記録とは違い、音で空間を埋め尽くす事よりもフレーズする事、ただのインプロじゃなくて、アドリブから派生したインプロを目指した音になっている。復帰後の『Lonely Woman』でソロによるインプロの限界を目指した後、グループ表現を経て、またしてもソロでのインプロ「Action Direct」へつながって行くことを思えば、数年後にはグループによるインプロの限界を高柳昌行はどこかで感じたのだと思う。この『断層』においてもある一定の到達点は感じられて、このあたりから高柳昌行はギターを通常の形体で維持する事を破棄する必要を感じていたのかもしれない。




『断層』からはずれてしまうけど、70年代初期の阿部薫とのデュオを改めて聴く。ここでのノイジーな展開は「Action Direct」に直結する音じゃないだろうか。この内容の濃い音から想像する以上に阿部薫高柳昌行の蜜月は短く、急ぎすぎる阿部に高柳は同行することをやめてしまう。

阿部薫はスロットルを戻せずに80年代に生きる事を避けてしまったけど、高柳昌行の「Action Direct」は、それに対する再度の呼応だったのだと思う。