The Raymond MacDonald Tokyo Improvisers Orchestra

Raymond MacDonaldというサックス奏者、今まで名前すら聴いた事が無かった。グラスゴーを拠点に活動しているという事で、ちょっと緩そうなイメージがあり、あんまり見に行く気は無かったのだけど、結局行ってみる事になった。



開場ギリギリの19:30に新宿ピットインに着く。どれ位の集客があるのかと思ったら、十人ぐらいしか並んでない。これぐらい人が居ないのも久しぶりだ。しかも、一応外国から招いた人がメインで、日本人演奏者もそれなりの顔ぶれなのに。開演までにはもう少し人が集まるかと思ったけど、結局席は半分ぐらいしか埋まってなかった。



日本人演奏者は、松本健一(Ts) / 木村昌哉(Ts) / 田村夏樹(Tp) / 辰巳光秀(Tp) / 八木美知依(筝) / 加藤崇之(G) / 臼井康浩(G) / 藤井郷子(P) / 伊藤啓太(B) / 豊住芳三郎(Ds) / 中尾勘二(As)。

藤井郷子、田村夏樹、八木美知依をライブの場で見るのは久しぶり。他の管楽器奏者は名前は知ってるけど、ライブで見たことがあるかどうか、記憶に無い。ギターの二人は前から一度ライブで聴いてみたいと思ってたので、これはちょっとツキがある。

それと豊住芳三郎。この中では重鎮的存在のこの人、正直言って、この人が出ているという理由でライブを見に行く事があるとは思えないので、この機会に見る事が出来てよかった。ピットインでこれだけの人数が演奏するのを見るのは初めてなので、ステージに入りきるのか疑問だった。まだ演奏者が居ない状態のステージを見る。ステージに向かって右側奥に箏が置いてあって、ピアノは反対の左側。後ろドラムとベースが並び、前列に管楽器奏者が椅子に座って並らぶ。ギターはステージからはみ出して、左右に一人ずつ。



チューニングの様なギターの音で演奏が始まった。そのギターに導かれるように各楽器が加わっていったのだけど、昨夜のライブは演奏者が多くて、その構成などは殆ど覚えていない。かなり適当な記憶だけど、続けてみる。最初の曲ではRaymond MacDonaldは指揮に専念。各奏者に対して、入りの指示を出しつづける。譜面はあるのだけど、どのタイミングで音を出すかは、Raymond MacDonaldの指揮で決まるようだ。そのため、演奏者はRaymond MacDonaldの挙動を凝視していて、なんか可笑しい。次の曲ではRaymond MacDonaldも演奏に加わる。自らのオーケストラという冠にもかかわらず、ソロは取らない。この二曲目だったか、次の三曲目だったか覚えていないけど、まあどちらかの曲が、管楽器が音を引っ張って出すという演奏で、これがちょっと、ライブで聴くのは辛かった。CDなんかでこの手の曲を聴くのは嫌いじゃないけど、ライブではちょっと眠くなる。その次は組曲形式で、なかなか面白い演奏だったけど、構成は覚えていない。

十五分ほどの休憩を挟んでの2ndは、どこかで聴いた曲で始まる(自信は無いけど多分藤井郷子の曲だと思う)。田村夏樹が曲のテーマを奏でるのだけど、この時の音の強さはなかなかだった。この曲で大活躍だったのは八木美知依。筝の弦をバチの様なもので押さえつけたりしながら音を出すのだけど、その姿を田村夏樹は笑いながら見ていた。そしてここでコレクティブ・インプロヴィゼーションの様な展開があり、これだけ演奏者がいると、かなり壮絶な音になるけど、そこはこなれているというか、あくまでも音楽的。ただし、それが良いか悪いか、こういう展開は音楽が壊れてしまうぐらいの方が面白のではないだろうか。

次か最後か覚えていないけど、1stと同じように音を引っ張る感じで始まる曲が2ndでもあって、「またか」と思ったけど、今度は展開があって面白い演奏になる。これも終盤はコレクティブ・インプロヴィゼーションで、その状態から音が一つずつ減っていく。最後はRaymond MacDonaldがノンブレスで音を出し続け、そして静かに演奏が終わる。



サックス奏者としてのRaymond MacDonaldは2ndセットでソロをとるシーンがあり、これは思ったよりカッコよかった。オケに対しての指揮ぶりは、実はオレはこういうはのあんまり見たことが無いので、よくわからない。ミュージシャンに対して、その人となりを書く必要は無いと思うけど、なんか珍しく、凄くいい人っぽかった。英語でMCしたのだけど、それがあんまりよくわからないオレは、その一生懸命伝えようとする姿が微笑ましかった。今回のオケは、どうやら藤井郷子と田村夏樹の両人が大きく関わっているらしく、それについてのお礼を言うシーンもあった。

注目の二人のギタリストは、ギターが二本という事でなのか、加藤崇之はエフェクターで音をいじる事が多く、臼井康浩の方がギターらしい音を奏でる。ぶっちゃけ、あれだけ人がいると、そうそうインパクトの強い音は出しにくくて、どちらもその個性を確認するには至らなかった。次の機会に期待。他に目についたというか、耳に入り込んできたのは、八木美知依の筝と田村夏樹のラッパ。特に八木美知依の筝は、昨夜のベストだと思う。そして残念だったのは、藤井郷子のピアノの音があまり聴こえなかった事。Raymond MacDonaldは曲を始める前、藤井郷子に何やら話しかけているシーンが何度かあったので、今回は、Raymond MacDonaldの補佐的な立場もかねていたと思う。それがあるので、自らのピアノは自己主張を抑えたのかもしれない。

しっかし、あの観客の少なさはなんなんだろう。確かに、月曜というのは、ライブにおいて、最も不利な条件である事はわからないでもない。それでも、東京の新宿であれしか人が集まらないなんて、この手の音を好む連中というのは出不精なのだろうか。なんか、もったいないと思う。とか言いながらもオレも全然ライブ見てない時期あるし、まあ、こういう事もあるよなって感じではあるのだけど。