David Tanenbaum

Terry Rileyのコンサートで一番の驚きだったのは、David Tanenbaumのギターだった。完璧なスキルのギターというものを、初めて見たような気がする。さらにその演奏した曲、もちろんRileyの曲だけど、これがオレにはDerek Baileyの曲に聴こえた。Baileyの曲は、彼が言うところのノン・イディオマティック・インプロヴィゼーションであるから、Baileyの語彙から出てくる音なので、作曲という枠の中で、それと同質の音がこれほど登場してくるという事が驚きだった。

初日のコンサートの一部が終わって、外でタバコ吹かして席に戻る時、一応と思って物販を覘き、結局Tanenbaum演奏のCDを四枚とRileyのCDを一枚買った。決して、物販のお姉さんに惹かれたわけではない。

本当はその日に演奏したRileyの曲、「Quando Cosas Malas Caen del Cielo (When Bad Things Fall from the Sky)」を演奏したものが欲しかったけど、多分それはまだCD用に録音されて無いのだろう。手に入れた四枚の内で、最も気に入っているのが『Royal Winter Music』。これはHans Werner Henze作曲の曲をTanenbaumがソロで演奏したもので、この作曲家も、恐らくニューミュージックの作曲家だと思う。このCDで聴ける音は、コンサートで聴いたRileyの曲と同じようにBaileyを思わせる音が多い。

Baileyの影響を受けたギタリストというのは、インプロの世界なら何人も存在しているけど、それらのギタリストの作品というのは、あまりBailey的な音が無く、多分、意識してBaileyと違う音を選んでいるのだろうと思う。

だから、Bailey的な音を聴きたい時はBaileyを聴くしかないし、もちろんそれで問題ないのだけど、でも、クラシックの側で作曲されたものに、Baileyとの親近性を感じてしまうという事は複雑な気持ちもあるけど、面白いと感じる事でもある。