羅針盤

山本精一というギタリストを知ったのは、多分大多数の人たちと同じように、Boredomsのギタリストとしてだった。ただ、Boredomsというバンドは、個々の楽器の音を聴くと言うより、圧倒的にグループとしての音を感じるバンドなので、特に山本精一に注目という事はしていなかった。それでも、Boredomsのメンバーがそれぞれの音楽活動をしていく中で、山本精一の思いで波止場は一番面白い音を出していて、この辺りから山本精一は気になる存在になっていく。思い出波止場で活動しながらも、山本精一は別のバンドを立ち上げ、それが羅針盤だった。

その1stの『らご』がメジャーで再発された時に手に入れ、何度か聴いてみたのだけど、どうもオレの趣味にあわず、何年も眠った状態にしていた(というか今も眠ったまま)。結局山本精一Boredomsを脱退し、思い出波止場もいつの間にか名前を聞かなくなっていた。その後はRovoというバンドを立ち上げ、今はこれが山本精一のメインバンドなのだろうと思わせるような活動を続けている。そんな状態でも羅針盤は細々と活動を続けていたらしく、その最新作『むすび』が夏ごろに発売されて、それをなんとなく手にした。

山本精一のフォークな側面にイマイチ反応できなかったけれど、この『むすび』は、『らご』の頃に留まらない歩みが記されていて、それが興味深い音になっている。相変わらずフォーク調のメロディーが耳に付くけど、それにインプロ的な展開を混入し、音響的にも考えられたこのスタイルは、今までにもあったようで、実は無かった音かもしれない。



何故急に羅針盤の事を書いているかというと、この『むすび』でドラムを担当しているチャイナこと西浦真奈が、DMBQのメンバーとして参加していたアメリカでのツアー中に交通事故に巻き込まれ、逝去されたというニュースがあったから。数日前にとあるBlogでこの事を知ったのだけれど、特にファンだったわけでもないオレがここに書くようなことではないから、この件には触れないでおこうと思っていた。でも、やっと羅針盤を聴き出したオレにとって、これはショックな出来事だから、ここにその事を書いておきたいと考え直した。オレはチャイナのことを全然知らないけれど、自分が気に入ったアルバムに参加していた人が、こんなに急に不幸な目にあうという事に嫌な気分になる。



チャイナさんのご冥福をお祈りします。