大江慎也 / 花田裕之

The Roostersがまだ活動していた頃には、その音を聴いていたわけではないので、そういう意味での思い入れは無い。ただし大江慎也のソロは聴いていて、オレの価値観を見事に否定してくれたその歌に、少し敵意さえ感じたこともある。

オレが初めて聴いた大江慎也の歌は、『Indies Festival 1987』というコンピに入っている「Revolution in Communication」だった(今現在のamazonの表記は間違い)。アルバムのトップだというのに、この脱力した歌、ハッキリ言ってただのヘタクソにしか聴こえないこの歌を聴いて、「なんでこの大江慎也とかいうやつが、この面子のトップなんだ?」と、頭の中が?で溢れた。その後大江慎也が元The Roostersのボーカルであった事を知るけど、あの頃は既にThe Roostersに求心力は無く、「だからどうした?」としか思わなかった。それからいくらか経って、オレは東京で生活するようになって、オレの田舎では深夜放送なんてやってなかったのに、東京では毎日TVが24時間放送されいてるような状態。そんな深夜(というか早朝)の「今日のお天気」みたいな番組で、天気予報のテロップのバックに大江慎也のプロモーション・ビデオが流されていて、それを何度も目にしたオレは、その曲が入った『Peculiar』を購入してしまう。



「だけど どうしてこの夜は冷たいのかい?

 どうしてこの道は乱れてるのかい?

 Let's Get Happy, Oh Baby Listen to Me」



夢も希望も何もないこの歌は、ドラマを助長するような歌しか無い日本の音楽シーンというところにこの歌は、全然関係の無いところからやってきて、オレの耳から離れなくなった。



The Roostersを看取った花田裕之のソロに、個人的には惹かれるものは無かった。それが数年前にRock'n'Roll Gypsiesというバンドを立ち上げ、ストレートなロックを聴かせるようになってからは、ロックの年輪を感じさせるようなその音にオレは、少しずつ反応する様になった。そのRock'n'Roll Gypsiesは、The Roosters時代の曲をライブで演奏する事から始めて、花田裕之からThe Roostersという足枷をはずす為のステップになったのではないだろうか。落とし前をつけるかのような、あのThe Roostersの一時的な再結成は、大江慎也の音楽シーンへの本格的な復帰だけではなく、花田裕之The Roostersへの距離感が、今までとは違ったものになっていたから可能だったのだろう。そしてこういった出来事が、『Origin Duo 〜 Counterattack』につながったのだと思う。



The Roostersをオレは結局後追いで聴いた事になるのだけど、『The Roosters』や『a-GoGo』のストレートなロックサウンドが好きだった。その後、ニューウェイブに影響を受けた『DIS』や『φ』のようなアルバムは、今聴くとそのサウンドのチープさで、なかなか聴き返すようなことにならない。だけどこの『Origin Duo 〜 Counterattack』で、『DIS』や『φ』の曲をアコースティックで演奏してくれた事によって、「Last Soul」と「I'm Swayin' in the Air」という優れた楽曲があったことに気付かされる。そして「Case of Insanity」。



オレがThe Roostersをアルバム単位で聴き出したとき、『Insane』と『Good Dreams』は結局購入に至らず、それでいいと思ってた。ところが『Origin Duo 〜 Counterattack』で「Case of Insanity」を聴いて、どうしてもこれのオリジナルが聴きたくて、最近『Insane』を購入(ついでに『Good Dreams』も購入)。CDを買って思ったのが、The Roosters周辺も商売がどうしてもセコイというかなんというか。オレの持ってた『The Roosters』、『a-GoGo』、『DIS』、『φ』は、2000年に発売されたボーナストラック付きの仕様なのだけど、現在発売されているものは、ボーナストラックをオミットしたもの。そして去年、『The Roosters Official Perfect Box』という、ちょっと手を出せないものも出している。何でこれ、わざわざボックスにするのだろう?それぞれ単体で出せば、これからThe Roostersを聴きだすヤツにとってもありがたいんじゃないか?




話が脇にそれまくりだけど、『Origin Duo 〜 Counterattack』は、オレが最近興味を持てなかった日本のロックにおいて、久しぶりに何度も聴き返すことの出来るアルバム。あまりにも着の儘の音だけど、だからこそ出せる音があって、その音をここで聴くことが出来る。