Gato Libre

表現の極みといった言葉が似合う音があって、それとして、オレはBaileyやMerzbowの音を聴いていた。そこにある音は、なにか違う次元から音が舞い込んできたようで、音楽というより、音そのものだった。それからはオレの音楽観に大きなブレが生じ始めて、音を探す時に、それと同じ基準の音を追い続けていた事があった。もしその頃、このGato Libreの『Strange Village』を聴いていたら、オレはこういう音を笑い飛ばしたんじゃないかと思う。



このGato Libreは田村夏樹を中心としたユニットで、細君の藤井郷子アコーディオンを弾かせ、ギターの田村和彦とベースの是安則克を加えた編成。完全アコースティックを狙ったのか、PAの必要の無い状態で演奏する為のユニットらしい。楽器を持ち歩いてその場で演奏できるような、そういう狙いがあるのかもしれない。

「憂いを帯びた音に哀愁のメロディー」、恥ずかしくなるような言葉だけれど、その言葉がこれぐらい当てはまる音も珍しい。BaileyやMerzbowが全てを真っ白に戻していく(消していく)ような音だとすれば、Gato Libreは、いつかどこかで見たことのある風景を、もう一度描いてみようとする様な音。そしてこれは、日本で生きているオレ達の感情に直結する音。