杉本拓

杉本拓は極端に音数の少ないギタリスト。というか、ギターに限らず、オレの知ってる限りの過去から現在において、最も音数の少ないミュージシャン。

その杉本拓が2003年にオーストラリアで行ったライブをCD化(2枚組)した、『Live in Australlia』を聴いた。そのCDの「Dot (73)」(Disc1)の冒頭、珍しく「ホワイトノイズ?」と思わせる音が入っていて、「こんな音出す人だったっけ?」と、ちょっと驚く。でもその後、徐々にノイズはちいさくなりながら消えていって、時折5弦か6弦で2音ほど音を出しては無音にするという展開が淡々と続いていく。

「Music for Amplifie Guitar」(Disc2)は、いつもどおりの無音状態からの無音の展開。どちらのディスクも1時間超の演奏で、自室で聴いていると、窓の外や自分の生活音の方が圧倒的な情報量として耳に入ってくる。



この音楽をオレは、人に薦める事は出来ないし、そのつもりも無い。ただ、こういう、既存の音楽へのアンチテーゼの様な音が存在するという事を、知っているのも悪くないと思う。

CDを聴いた後、CDの発売元のImprovised Music from JapanのHPで、「Dot (73)」のノイズは、たまたま会場の外で振り出した雨の音だという事を知る。自然の音がノイズに昇華される、その音の場所が面白い。