OKI

ライブの連荘。昨夜は恵比寿のSpazio2でOKIのライブ。元々OKIというミュージシャンをそんなに聴いているわけではなく、故安東ウメ子の作品でトンコリというアイヌの民族楽器を弾いてる人、ぐらいの認識しかなかった。それが今年になって出た『トンコリ』というOKIのアルバムを聴いて、考え方が変わってしまう。このミニマルな曲と音は、この洗練された音楽が、アイヌの文化には存在しているという事と、その文化から零れ落ちそうになったこの音が、費えてしまいそうになっていたという事に、文化の継承というものを考えさせられる。その後、トンコリという楽器には弦が5本しかなくて、さらにフレットも存在しない為、基本的に5つの音で音楽を奏でているという事を知って、今まで聴いてきた色んな音楽の事を考えてしまったりする。まあ、それはいいのだけれど、とにかくこの『トンコリ』というアルバムには、かなり耳を惹きつけるものがあった。でも実はこのアルバム、オレには強烈すぎて、そんなに聴く回数を重ねていない。それでもOKIのライブがあるとわかった時、これは今、ライブで聴きたい音だと思った。



ライブはOKIのMCを交えて進行していく。トンコリは座って弾くものかと思ってたけど、OKIは立って弾いていた。ストラップを取り付けている物もあれば、肩に載せるように持つ場合もある。音はアンプを通して鳴っていたけど、エフェクターを使って音を変化させるというわけではないので、ギターでいえば、多分エレアコと同じ構造になっている。ステージ上には6本ほどのトンコリが並んでいて、それをOKIは、曲によって使い分けていた。

OKIのMCはなかなか面白い。ほぼ一曲ごとにMCを入れるのだけど、それは次の曲についての説明と、トンコリのチューニングを行う為だ。そのMCの内容は、当たり前だけど初めて聞く(知る)事が多くて、その話を聞いているのも楽しかった。トンコリの弦の並びは奏者によって違うらしく、例えば5弦目が一番低い音の張り方もあれば、一番高い音の並びもあるらしい。OKIは「こんな事でいいんか」と言っていて、一つの話の間に必ず笑いを取るという、芸達者なところもあった。

前半は、OKIが影響を受けたトンコリ奏者が弾いた曲を弾き方そのものも真似て弾いていたのだけど、その曲のなかでも、いかにも民謡らしい曲と、結構アグレッシブな響きの曲があって、飽きる事が無い。

後半は、OKIが作った曲や、若干ディレイを使ったりして、流れを変えてる。そしてアンコールは、何故かギターを持って登場。意外にもしっかりしたコードワークで、多分最初に手にした楽器はギターだったのか?と、想像させられた。二度目のアンコールは、やはりトンコリを使っての演奏。ギターの曲で場を熱くした後のトンコリの音は、いっそう胸に響いた。



MCで時々、アイヌ人としてのプライドを覗かせる部分があって、OKI自身もちょっと言い過ぎたと思う場面だったのか、「といっても、私自身はべつに活動家とかそんなわけじゃありません。今はただの、チューニングに忙しいミュージシャンです。」と言って、空気を変えることを忘れなかった。でもオレは、アイヌの人達の生の声が聞けると言う事は重要だと思う。そして少々強い言葉であっても、彼らは、オレ達にその言葉を向ける必要があると思う。