大友良英トリオ

ピットインのスケジュール表ではタイトルの様になっているのだけど、大友良英のブログを見ると、いつの間にか大友良英 New Jazz Trio +というバンド名に変わっている。ONJTって事。一年前にONJTがわかりやすくていいはずと書いた事がある。その希望通りになったのだけど、なんか腑に落ちない。別にいいけど。ONJTはもちろん大友良英水谷浩章芳垣安洋の3人で、それに+なのがゲストのSachiko MとJim O'Rourke。トリオの時には演奏者が客席側で向かい合い、それを客が取り囲むというスタイルを気に入っていたようだけど、今夜は立見も出る盛況だったので、普通にステージ上での演奏だった。
1stの2曲はONJTでの演奏。多分最初の曲はAlbert Aylerの「Ghosts」。が、この曲であっているかの確信は無い。何故かAylerの曲はかなりごっちゃに記憶していて、なので怪しい。もう少し言うと、多分Aylerは間違いないと思うのだけど、もしかしたらOrnetteの曲の気もしないでもない。なんか、AylerとOrnetteの曲って似ていると思うんだよなあ。まあいい。序盤、ガサガサと探るところから始まる。そこから徐々に立ち上がるというパターンかと思ったら、芳垣の強い叩きでいきなりガガガっ、という展開。時折落ち着くところを挟みつつ、終始テンション高い演奏。次はお馴染みOrnette Colemanの「Loney Woman」。こっちは手探り全く無しのアグレッシヴが終始。芳垣のシンバルのロールがインパクトがあって、水谷のベースへのアプローチも多彩で、その中でも2本のマレットで弦を挟み込んで、激しく叩きつけるかのような音には驚いた。このバンドの演奏という意味では、今夜が今までよりも特筆だと思った。
そしてMとO'Rourkeが加わわって、多分即興。Mはいつもの様にサイン波で、O'RourkeはEMS。人数が増えたのに見た目の音数が減るという、ある意味ジャズらしくない雰囲気がONJらしいかもしれない。
2ndは1stにやった2曲をONJT+の編成で再アプローチ。Mが加わる事で引き出されるのが1stの最後の演奏だったと思うのだけど、2ndはそれに縛られず、ONJTの面子が持つフリージャズのイディオムと、+の2人が持つエレクトリックな音のコントロール能力が絡む。O'Rourkeは細かい音と圧力のある音を満遍なく散りばめて、Mは、毎度の言い方だけど、決して大きくないはずの音量なのにその音が出されていると必ず耳に届く。この後もう1曲、これも多分即興だと思うのだけど、その演奏で2ndは閉じる。
個人的に、今夜最も印象的だったのは水谷。先のマレット以外にも色々と変わったアプローチを用いていて、ここまで色々やる印象が無かったので余計に印象が強くなった。それでいて当たり前にピッチカートのカッコよさ、そして「Loney Woman」のテーマを大友に合わせてアルコしたところは美しいとしか思えなかった。
アンコールはONJT+に加えて、どうやら遊びに来ていたらしい吉田アミを加えた演奏。ここは当然本編とは違った吉田を活かした演奏なのだけど、もしかしたら今後ONJT++としての可能性も・・・。

大友良英トリオと名乗っていた頃は多分、あえてONJというところから離れたかったのか?と思う。大所帯になってある程度面子が固まったONJOがどこかで止まる事は、大友のやっている事を多少見ていれば仕方が無いという気がしていたのだけど、それでもやれるところまでやった感があったはずで、その結果、素直にすぐにONJTとは言えなかったという憶測。それと、大友のニュージャズである以上、ノイズというか、エレクトリックそれが加わらない状態でONJは付ける意味が無かったのかもしれない。そう考えると、ONJTの肝は実は+なのだろうか? だけど今夜の1stの2曲の演奏は+が無い魅力が凄くて、当分こっちの演奏の方を思い出す機会が多い気がしている。

一つ、ちょっとなあって思った事。この手のライブとしては拍手のタイミングが少し早い気がした。まだ薄く音が残っていて、あと5秒、拍手を始めるのを待って欲しかった。この5秒が大事。