Un homme et une femme

大友良英 / 歌と即興、そしてサウンドトラックの3日間』の2日目、ピットイン。

今夜は特殊セッティングという事でどうなるのかと思ったら、以前にもやってた客席側で演奏するスタイル。円形とは少し異なって、バラバラ気味に演奏者が配置されていた。

1stはAAAMというユニット。大友とヴォーカルの吉田アミ、サイン波のSachiko M、ベースのAYA、ドラムンパーカッションのAi(OLAibi)。大友以外の名前でユニット名みたいなので、勝手に大友は入らないと思っていた・・・。AYAとAiが全く知らない名前だったので(OOIOOのメンバーである事を今知った)、どういう人なのかと思ったら、なかなかオレの目に嬉しいルックスの持ち主。だけど、それだけということは当然なかった。
Aiはドラムセットの横にコンガ系のパーカッションをいくつか並べたセッティング。闇雲に音を出していくタイプとは違って、音を置いていく。間を意識した音の運びで、オレはこういう演奏が凄く好き。そして最近の打楽器奏者には珍しく、一切小物を使っていなかった。ベースのAYAも小柄な女性で、それでアコベをジャジー気味に響かせる。PAなのかエフェクターなのか、若干、純な音ではないのだけど、アコベの持つ音の雰囲気だけに頼らない演奏だったと思う。そしてなんとなくピットインで見る事に違和感のある吉田は、あの独特なノイジーヴォイスだけじゃなく、色々と声色を変えつつ、上モノの役割をこなす。その吉田に類似する位置のMのサイン波は、こうやって2つの音が出る事で違いが如実で、吉田とMの普通じゃない音は音量が大きいわけじゃないのに、ずっと存在感がハッキリしていた。イニシアチヴを持っているはずの大友は、そういう中で特にアヴァンに攻めるわけじゃなく、弾きすぎず、でもちゃんとコントロールは考えていたように見えた。音楽としては静的なフリーインプロにフリージャズを持ち込んだような、そして臨場感のある内容だった。

2ndは大友とベースの水谷浩章、ドラムの芳垣安洋のトリオ。このトリオは2回、1セットずつ見ているけれど、勿論面白いのだけど、思いっきり掴まれた印象は無い。面子が面子だけに、どうしても予想はつく。それを覆すという事も欲してなくて、わかっているけどやられた、という演奏が聴きたい。で、今夜、その状態になった。
静かに探るような序盤から、疾走をはじめたリズム隊の上でまるでPat MethenyJeff Beckの様な爽やかなフレーズをシングルノートで紡ぐ大友。アヴァンギャルドではなくてフリージャズとする為にギターを弾いているようで、悠々と大きく聴こえる。行けるところまで行って、そこでらしいアヴァンが出てくる。ここで出てくる熱が、この3人が揃う理由だと思う。28分で1曲の演奏が終わり、短いのでもう少しという事で「Lonely Woman」。大友がこの曲を演奏するのを何度も聴いているけれど、この曲のテーマを愛しんでいるように見える。エンディングの尻切れ感がメチャクチャカッコよかった。

今夜は3セットという事で、最後は全員揃って。1stと2ndが上手く融合されたような演奏。打楽器奏者が複数居る事はままあるけれど、ベースが2本というのは、それなりに大人数じゃなければあまり無い。そういう状況で、アコベらしいフレーズはAYAに任せて水谷はアルコをメインに。そして芳垣も、小物を手持ちして場内を練り歩く。Aiの近くに来てビートの競演。上がりつつも、沸点までは行かないように全体が動いているように見えた。

アンコール含みの3セットだったはずだけど、アンコールの要求。予定してなかったらしい。「いい演奏だった?」等と近くの客に問い合わせる大友。問われた人は勿論良かったと答えたようで、そんなやり取りを聴いていた吉田が「じゃあ台無しに・・・」と言って始まった演奏は、ハードコアだった。カッコいい!!

昨夜とは全く違った内容。大友自身が今夜の内容が良かったかどうかの把握が無かった辺りが、今夜のライブの面白さだったと思う。どこかで妙にスネアらしきものが共鳴して音が出ていたりしたのだけど、あれは狙いなのだろうか?、という疑問が残ったりするのも個人的には面白かったりする。