内橋和久 FLECT II

内橋和久ソロCD『FLECT II』リリース記念のライブが今夜のスーパーデラックス。



ゲストにSamm Bennettといとうはるなのユニットskist、そしてUAの名前。UAのファンがこういうライブにまで足を運ぶのかどうかわからないけれど、濃いファンは来てもおかしくない。なのでかなり混むことを覚悟したのだけど、結果、そうはならなかった。



1st、内橋のソロ演奏から始まる。昨年だったか、ピットインの昼の部で内橋のソロライブを見たのだけど、それ以来。方法論は基本的に変わらない。自らのギターをサンプリングして、エレクトロニカ気味に音楽する。それの今夜ならでは、は、SDLXの四隅に置かれたスピーカーと天井にセットされた18個のスピーカー。何年か前にYCAMでやったものを持ち込んだらしい。サラウンドにプログラミングされたそれは、演奏中の内橋のすぐ近くにいた伊藤隆之という人がセットする事で可動するらしい。音の位置が明らかに変わっていくのはやはり面白い。頭上を音が通ると、思わず天井を見てしまったりする。そして今夜は終始そうなのだけど、内橋は殆どギタリストらしい演奏をしない。ピットインでのソロの時にもそうだったといえるけれど、ここまでではなかった。ギタリストというエゴを使わない。サンプリングしてそれを扱う事を主としていて、ギタリストのライブという感覚は無い。

ソロの演奏が終わってゲストを呼び込む。UA。早速か。どういう演奏をするつもりなのかと思ったら、内橋のエレクトロニカな音の上をUAが即興的に声を乗せる。すぐにUAの声とわかる声が響く。感触は『Breathe』なのだけど、その『Breathe』はあまり面白く思わなかったけれど、今夜は違う。なんだろ?、この動き回る音のせいか?と思ったりしたけれど、違う。冠が内橋という事、それが印象を変えている。UAの作品として『Breathe』を聴いても求めるものが違っていたけれど、UAの声を内橋が素材として扱っている場は、内橋の音楽として聴く。それだけで受け入れ方が変わった。そしてUAが今度は即興的に言葉を扱い、さらに『ATTA』の「Purple Rain」に変わる。この辺はなんやかんやUAのCDを聴き続けている立場には嬉しい展開。



2ndは内橋とskistの共演。内橋がサウンドスケープ的に背景する中、Samm Bennettは色んな楽器を扱うのだけど、その中の2弦だか3弦だかの弦楽器が内橋よりもギター感があるし、壷の様なものでパーカッシヴにリズムを刻むし、電池仕掛けの小物をブンブン言わせたり、なんか誰が主役だかよくわからん。はじめてライブで見る事になったいとうはるなは、UAの様な声そのもののインパクトは強くなくても、音に混ざり合う感じが心地良く、小物で音を出したり、流石に熟練されている。アヴァンギャルドに攻め立てる即興系のヴォーカルが苦手なオレは、いとうさんのスタイルは受け入れやすい。このセットは音の種類が多く陰影もあったけれど、常に1つのトーンがあったような気がする。



アンコールは全員揃って。UAといとうさんの2つの声は対照的だから面白いし、内橋もこのセットはそれまでに比べると、少しギタリストらしさはあった。と言っても、Altered Statesでのあの感じとは全く違う。



なんか、変わった印象が残ったライブ。圧倒されたとか、イマイチだったとか、なんかそういうわかりやすさはなくて、でも始まりから終わりまでちゃんと頭に残っているような。即興だからという事ではなくて、もう1度これに近いものが聴けるという事が無さそうなライブ。