酒井俊 〜 渋谷出張編 & “Nights at the Circus vol.1” CD発売記念ライブ 第二夜

歌と一つの楽器というシンプルな関係。酒井さんのそれは、昨年の内橋和久とのデュオを知っているけれど、曲との関係性が見つけにくい自在に音楽する内橋の音の上を、酒井さんだけが見つけられるポイントで歌いこまれていた。

田中信正というピアノ弾きとのデュオはなってるハウスで試みられていて、それを見る事は叶わなかったのだけど、クラシックスという場でのその実践は、決まりごとを歌うという自由がある事を見せ付けられる。



田中というピアニストをジャズ奏者と捉えていいかどうか、数回聴いた音ではいつもよくわからなかったのだけど、結局今回もそのまま。選ぶ音色の殆どにジャズの面影が無く、クラシックな響きが印象に残る。Glenn Gouldのようにピアノに向かう時は神経質なまでの単音の羅列であったり、Cecil Taylorのように鍵盤を打ち鳴らす時も、音は不明瞭に鳴らない。トリッキーなフレーズは出てくるのだけど、それが外しの狙いには聴こえず、内なるものが放出される結果に思える。さらに、何度も酒井さんを喜ばせた音楽の作り方が尋常じゃない。そろそろ、はっきり断言しとくけど、オレは今、ライブで最も好きなピアニストはこの田中。