Satoko Fujii Trio

Atomicの後、Mark DresserとJim Blackが来日して藤井郷子さんと田村夏樹の4人でツアーが始まる。東京は12/16、ピットイン。個人的にはAtomicと同じぐらい、このライブへの期待は大きい。



藤井さんのCDのリリースは数が多く、そういった面でファンとしては渇望の時間は短いのだけど、それが逆にCDを手にする事への遅延を生んだり、手に入れても繰り返し耳にしない状況を作っているような気がする。そんな事は承知の上でのリリースなのかもしれないけれど、今年の3月に同時リリースされたトリオ編成の『Trace a River』、Junk Boxの『Cloudy Then Sunny』、田村夏樹がリーダーのGato Libreによる『Kuro』、続いて4月に名古屋オケの『山嶺』、そして9月下旬にはNYオケの『Summer Suite』、ma-doの初作『Heat Wave』、田村のとデュオの『Chun』と、今年は7枚ものリリース。CDのインプレをログにする事が疎かになっている状況なので、12月のツアーに便乗してとりあえず『Trace a River』。



ライブに通っていれば、この作品に耳なじみの楽曲を見つけられる。藤井さんの書く曲は改めて聴いてもカッコいい。ある種の作風は当然あって、だから信用できる。だけどジャズである以上、楽曲だけではなく、各々の演奏に惹かれる事も重要で、この作品はそれらを兼ね備えている。

コテコテ全曲の印象を書くとまたしても長くなるので、最も印象に残るアルバムの1曲目でタイトル曲の「Trace a River」に限定。

不穏な印象のイントロから曲のテーマ。藤井さんらしい、1度聴けば耳に残るテーマ。そして無伴奏でDresserのベース・ソロ。時間をぶった切るようなそのソロを聴いた時、何故こういう事になるのかわからなくて、だけど強烈に惹かれる。Dresserの作品もいくつか聴いているし、この人が特別なベース奏者である事も理解しているけれど、とにかくここのソロがオレが今まで聴いたDresserの音で最も好きな音。Dresserに限定しなくても、ベースのソロの中で、最も求心力があるかもしれない。その強烈なインパクトから曲に戻り、続けて藤井さんの無伴奏ソロ。藤井さんがソロを弾く度にCecil Taylorを思い出すけれど、当然今回もそんな感じで音を散らす。そして再び曲に戻り、さらにBlackの無伴奏ソロ。ドカスカと、かなりの数の音を叩き出す。このソロだけではなく、Blackの叩き出す音は全編にわたってかなりの存在感を示している。そしてイントロの続きの様な演奏に戻り、Dresserのアルコがその雰囲気を活かした音を奏で、それに合わせた音の藤井さん、それを気にしていないようなビートを刻むBlack。それらがなんとなく合意を見たようなところで演奏が終結

他の演奏ももちろん面白いのだけど、この曲は特に秀逸。そして、この作品の音質はかなり良いと思う。この音じゃなければ、Dresserのソロも、ここまでの印象は残さなかったかもしれない。

こんな演奏をライブで聴ける可能性に、期待しないわけが無い。









藤井郷子トリオ 『Trace a River』