Steve Coleman

ジャズとファンクの一体化というとMilesを思い出すけれど、それの80年代的な音での表現が一部のフュージョンだったのかなと思う。それには80年代のMilesも含まれるのだけど、個人的にはそういう音はあまり面白いと思っていない。あの頃はジャズもMTVという空気に飲み込まれていたんだろうか? だけど殆ど唯一と言っていいぐらい、80年代型ジャズ&ファンクでカッコいいと思えたのはSteve Coleman率いるM-Base一派だった。あのエレベの音の響きも含めていかにも80年代な音作りだったので、今聴くと古臭さは感じるけれど、それは時代とシンクロしていた証だし、他にもそういう音がある中でM-Baseの心地いいのか悪いのかわからない変拍子は確実に脳裏にすり込まれ、その後その一派からCassanra Wilsonという、アフロ・アメリカン音楽の歴史の中でもかなり重要なシンガーを輩出した事もあり、M-Baseという呼称は聞かなくなっても、それがあった事を忘れる事はない。

そしていつからか音楽のスタイルを変化させたSteve Colemanは、まるでDon Cherryの様にワールド・ミュージック的な要素を取り入れていく。そうする事によって注目を浴びる事は少なくなったけれど、歩みという点では確実に進んでいると感じさせる。

そのSteve Colemanの新作『Invisible Paths: First Scattering』は、意外にもTzadikからのリリース。しかも(アルト)サックスのソロ演奏。サックスのソロ演奏といえば殆どがフリーキーなもので、良くも悪くも上手いとかそうじゃないとかそういう事を考えるようなものではない。だけど『Invisible Paths: First Scattering』はフリーキーな演奏ではなく、書かれた曲に忠実に演奏する。勢いとか誤魔化しで何とかなる様な条件ではないけれど、Colemanは文句無しにサックスを鳴らしきる。微熱は感じさせながらも、クールに音を運ぶ。









Steve Coleman 『Invisible Paths: First Scattering』