藤井郷子民謡アンサンブル(Satoko Fujii MIN-YOH Ensemble)

この『風神雷神 (Fujin Raijin)』も郷子ねーさんの新作で、気が付くとリリースされていたもの。だけどなかなか店頭で見かけることが無く、意地になってタワレコかユニオンに入荷されるのを待っていた。けれどなかなか入荷せず、諦めてネットでオーダーして購入した。

この作品は日本の民謡を素材に演奏したもので、実際にトラディショナル・ソングなのは最初の「五木の子守唄」と「刈干切唄」の2曲。他は郷子ねーさんが日本のメロディーを意識して書いた曲。ジャズとは違う色合いの曲を素材にして、その曲の持つ雰囲気とジャズに当てはめるからにはそれらしさも挿入しなければいけないという困難を表現している。過去にもこの手の作品はあったけれど、そういうものは例えば三味線などを編成に加えたりして、それで満足してしまっていたりしたといえる。郷子ねーさん程の才に長けた人ならば、そういう手法でうまく和楽器を取り入れることも出来ただろうけれど、『風神雷神』では自身のピアノと田村夏樹のトランペット、Curtis HasselbringのトロンボーンとAndrea Parkinsのアコーディオンという、風変わりな編成になっている。それはこの演奏がアメリカでのライブ録音である事が影響しているのかもしれないけれど、ファンとしてはこういう風に変わった編成のものは、それだけでも興味が沸く。

即興のアプローチも当然こなす郷子ねーさんだけど、作曲も含めて曲という枠を使った表現の面白さみたいなものも持ち味のひとつだと思う。日本の民謡というかなり限定されたイメージのものを題材に使うという事は、そこに閉じこもるか弾き飛ばすかという選択が考えられるけれど、『風神雷神』はその両方を兼ね備えていると言ってもいい。素朴だけど耳に残りやすいテーマと、そこからの展開のアドリブ。こういうとジャズマナー的という言い方も出来るけれど、編成の妙で、そう感じさせなかったりもする。

ちなみに「刈干切唄」では、郷子ねーさん、歌ってます。









藤井郷子民謡アンサンブル 『風神雷神