The Thing

クアトロのBattlesに行くつもりが無かったのは、The Thingの2daysの初日が10/1だった為。2daysならば1日はBattlesを見に行けばいいと思うのが普通だと思うけど、考えた末にThe Thingを2日とも見たいと思った。

The Thingは、ヨーロッパで最も強烈な音を持っている3人によるユニットと言っても過言ではないはず。それを次に体験出来る機会を考えた時、そう遠くもないかもしれないけれど、必ず次が約束されているわけではない。ならばアルバムの印象が良くなかったBattlesよりも、The Thingを選びたくなる。それでも結果的にBattlesも金曜に見ることが出来たので、少々の運は残っていた。

Mats Gustafsson、Ingebrigt Haker Flaten、Paal Nilssen-Loveの生音を同時に聴いてどう思ったか言えば、「半端ないな」と思った。ワン・ホーンのトリオ編成というものをあまり見てないので何かと比較は出来ないし、イチイチそんな事する必要はないと思うけれど、とりあえず現時点で世界最強という感じ。とてもアジア人には出せそうにない音。それを新宿のピットインというハコで目の当たりにしていると、なんか変な気分。トリオ編成での演奏は1stの2曲で終わり、早い段階でびっくりゲストと記されていたギタリストが加わる。誰が加わるのかという想像はしていなかったけれど、演奏が始まる前にとある事でJim O'Rourkeが来ているのを知ってしまえば、紹介される時点でびっくりはしない(その後2ndと勿論アンコールもO'Rourkeが加わった状態)。

O'Rourkeが加わった演奏は一段と壮絶さを増す。O'Rourkeはぶち切れ、陶酔度数が高い。そういえば本気なO'Rourkeを聴くのも昨年の恐山以来。負けじと吹き荒れるMats。アルトを吹く時の姿はJohn Zornを思わせ、バリトンを太ももに押し当てる時の一本足の姿は、王貞治並に絵になる。フロントの2人がかなりヤバイ状態で絡みあっていても、そこで休憩しないPNL。圧力、音の強さ、スピードという点で、今まで聴いたどのドラムよりもPNLは一枚上手。そんな状態でアコースティック・ベースのFlatenは何が出来るのかと言えば、禍々しい音をかき鳴らす。色んな意味でアコベは不利だと思ってたのに、Flatenは違う。印象に残っていないAtomicの時とは全然違う。実はFlatenが今回一番聴きたいミュージシャンだった。その期待を裏切らないFlaten。個人的には昨夜最も印象に残ったのがFlatenの音。




かなりやられた状態の帰り道は、classicに突っ込んであったChuck Berryを聴いた。なんでそういう選択かといえば、ライブ前や休憩中にブルースが結構流れていたからで、しかもレ久しぶりに買ったココレの最新号がChessレーベルの特集で、その影響で手持ちのブルースを聴きなおしていたという事も関係している(Chuck Berryはロックンロールの代名詞だけど、ブルースな曲もある)。



いつもの様に本文が適当なので、小ネタを一つ。実は昨夜Jim O'Rourkeに足を踏まれた。といっても靴の先っちょを掠めた程度で、オレ自身はなんとも思わなかったのだけど、O'Rourkeは振り返ってオレに「ごめんさない」と2回ほど言った。まさか謝られると思ってないのと、とっさの出来事なのにO'Rourkeの口から「ごめんなさい」という日本語が出てきた事にオレの方が面喰い、何故か一瞬、「ノー・プロブレム」と言おうとしたのだけど、相手が日本語なのにオレが正しい使い方かどうかもわからない「ノー・プロブレム」と言うのもおかしいと思い、とっさにO'Rourkeの顔を見ながら手を上げて大丈夫という動作をした。そしてその後思った。この手を上げるという動作、日本人なら大体理解できる動作だと思うけど、これ、外国人に通用するのか?

この件でもわかるように、O'Rourkeは凄く腰が低い。ステージに上がる時や下がる時、いつも頭を下げるような感じで歩く。こんなに腰の低い外国人はミュージシャンに限らず見たことがない。日本人のミュージシャンでもこんなに腰の低い人はいない。という事で、オレはますますJim O'Rourkeのファンになりました。