芳垣安洋AG6

ピットインで芳垣安洋のセッションとなれば、余程都合が悪くない限り足は向く。昨夜はAG6というユニット名がついていたけれど、特に面子のチェックもせずピットインへ。

芳垣以外はベースの原田仁、ボントロ及び横笛な青木タイセイ、テナーの藤原大輔、パーカッションの辻コースケという面子。本来ここにヴァイオリンの勝井祐二の加わる予定だったようだけど、体調不良で参加出来ないとの事(その為今回はAG5だとか・・・)。元々勝井が加わっている事を知らなかったオレにはあんまり関係ないけど、どうやら進行上に問題があったようで、予定を変更せざるを得なかったらしい。

AGはアフロ・グルーヴの略らしいのだけど、それはあんまり関係なくなったというようなことをいっていた。そして、1stの1曲目はOrnette Colemanの「Lonely Woman」。フリージャズの曲をやるので今日はフリージャズだとも言っていたけれど、リズムはしっかりグルーヴしてて、フリージャズな演奏という印象は無い。芳垣と辻の絡みはアフリカンやラテンな音楽を知っているもの同士の為問題なし。そこに原田のフレーズよりもブツ切り感のあるベースがリズムを刻む。この原田のベース、個人的にはかなりはまった。続けてJames Blood Ulmerの1stアルバム『Tales of Captain Black』に収録の「Moon Shine」。Ulmerについて芳垣が「ジャズの人だと思っていたら、『Lightning in a Bottle』でブルースを歌っていてビックリした」というようなことを言っていて、『Lightning in a Bottle』を見た人は手を挙げろというが、客席には一人しかいなかったようで、「みんなブルース嫌いなの?」と。『Lightning in a Bottle』はスコセッシの映画らしいのだけど、オレはブルース・プロジェクトの6作品はDVDで見たけれど、『Lightning in a Bottle』については知らず、片手落ち。これはチェックしないと・・・。話を元に戻して、「Moon Shine」のオリジナルは導入部のテーマをギターが弾いているのだけど(その後はOrnetteも加わる)、それを昨夜はタイセイと藤原の二管が奏で、元々「Lonely Woman」のバリエーションだと思えるこの曲がさらに「Lonely Woman」っぽくなり、さらに1曲目を引き継いだようなリズムが走る。続けてテンポを落としたミニマルな曲が演奏され、1stの締めはVincent Atmicusの「Smokin' with Ginger Cigarette」。

2ndはタイセイがこの日のために用意した新曲で幕を開ける。いかにもタイセイらしいメロを持った曲で、穏やかな雰囲気。その後はこの日の目的であろうと思えるアフリカの曲を2曲演奏。藤原がネット・ラジオで聴いていて見つけた曲らしく、その中のエチオピア?の曲が日本人の曲に近いという話をステージ上でしていて、その比較として北島三郎の名前が出ていたけれど、ようするに演歌という事なのだろう。だけど個人的には北島三郎というより、タイセイが書く曲に近い印象を受けた。そしてこの辺の演奏は、もし、勝井がいればその存在がクローズアップされる場面だったんじゃないだろうか? グルーヴも管楽器も問題なかったし、特に時折出てくるタイセイの横笛はかなり良かったけれど、それでも上のほうが空いているというか、そういう印象はあった。なのでそこに勝井のエレクトリック・ヴァイオリンが音を重ねる予定だったというのは考えすぎだろうか? 2ndの締めは宗教的な響きの曲からVincent Atmicusの「Turkish Van」。アンコールは、6月のEmergency!でもやっていたChicの「At Last I am Free」。芳垣の歌はEmergency!の時ほどは聴かれなかったけれど、こういう曲で締めるところが芳垣らしいというか、さすがとしか言えない。




殆ど演奏については触れなかった藤原大輔。どこかで見たことある顔、聞いた事のある名前だと思って調べると、Phatの藤原であることがわかった。Phatは現在は解散してしまっているけれど、クラブ音楽世代のジャズと言われ、日本人で初めてブルー・ノートと契約したという事で話題にもなった。オレは多分インディーの頃からほぼその作品を聴いていたけれど、ヘタなラッパーをフィーチャーしたりするセンスに若干違和感を持っていた。だから解散した時にもあまり何も思わなかったし、リーダーである藤原の名前も覚えていなかった。だけど昨夜のライブでアフリカの音に興味を持っている事がわかり、フリー・ジャズ曲の編曲を手がけた事などから、リズムに対する姿勢が感じられたし、実際彼のテナーも、強烈な個性とまでは言わないけれど、クールに音をフレーズを重ねるアドリブには聴かせるところがあったし、もう少し彼の音を聴いてみたい気分になっている。